2016年02月15日

アメリカで、かなり前から普及している206材の両面にOSBボード張り!



OSBという面材を、ご存知だと思う。
オリエンテッド・ストランド・ボードの頭文字を集めたもの。 日本農林規格(JAS) では、「構造用パネル」 と呼んでいる。
つまり、構造用合板を作るには良い単板が必要になってくる。 しかし、良い単板は簡単に得られなくなってきた。 そこで、構造用合板に匹敵する性能をもったものとして、木の繊維を混合したOSBが開発され、日本だけでなく世界で広く使われてきている。
OSBを単に構造用合板に変えるだけだったら、それほど意味がない。 アメリカではかなり早い時期からこれを206材の両面に張り、中に硬質ウレタンフォームを充填したパネルが開発され、軽量で性能が高いことから広範囲に採用されてきている。

これを参考にしたA&M社が、このほどアメリカと同じように206材の両面にOSBを張り、中国から硬質ウレタンをリズナーブルな価格で輸入して、昨年に発売を開始した。
しかし、構造用合板を両面に張るという意識が日本人の中にはない。 片面の外部には構造用合板を張れば、内部の壁は石膏ボードで十分という意識が残っている。 余分にカネをかけても、誰一人として褒めてはくれない。 このため、発売は開始したが、未だに実績はない。
しかし、中越で震度7強という直下型の激しい揺れを体験した川口町の激震地。 大雪に耐えるために4~5寸という太い柱の家が、軒並みに倒壊していた現場を見て、私の考えが変わった。
よく言っているように、震度7強という激震に耐えられる住宅を創れないようでは、お世辞にもプロとは言えない。
震度7強の激震地に残っていたのは、構造用合板を利用したトステムのスーパーウォールのみ。
これから見て、ともかくスジカイなどより、面材の使用を大前提に考えねばならないということは分った。 しかし、それ以上のことは考えられなかった。

その時、A&M社は両面OSBを張り、硬質ウレタンを充填したパネルで、日本の検査機関で壁倍率7.3倍という認定を得たというニュースを昨年の夏前に得た。 私の認識では、地震国日本の検査機関は厳しい。 どんなに力んでも、壁倍率は5.0倍しか認めてくれない。
私が知っている唯一の例外は、長野に本社を持ち、オーストリアの技術で息の長い商売をしている 「自然の住まい社」。 何しろ無垢のランバーを何枚も交互に組合わせた、いわゆるCLT (クロス・ラミネーテッド・テンバー) で壁厚が17センチもある。 10年以上も前に日本の検査機構で壁倍率8.0の認定を得ている。 何しろ木造なのに150分の耐火記録を持っている。 ただ、残念なのは坪価格は100万円と高すぎ。
それに次ぐのがA&M社の7.3倍。 したがって特筆すべき内容だと言える。
これを何とか普及させたいと考えた。 そして、応募してくれたのがA邸で、A&M社とA氏に任せていたら、Q値が0.8Wではなく、予算の関係もあったようで1.0Wになり、とてもじゃないが私のホームページで紹介出来る内容ではなくなった。
しかし、私はいつものように下記のプランに基づいて計算した結果、Q値は0.8Wを上回る試算が得られている。

基本プラン.JPG

このプランは平凡なもの。 特別な内容もなく、40坪の平凡な3LDK住宅。
ただし、このプランは204の住宅を中心に考えられているから、延床面積は132.5㎡ (40.08坪)。
これが206となると壁厚が51ミリ増えるし、9ミリのOSBも1枚増えるので+9ミリ。 さらにA&M社は配線・配管用のスペースとして、内壁の石膏ボードの下に38ミリの空間を取ることを考えている。 都合壁厚が98ミリ増えることになるので、壁芯で計算すると延床面積は136.3㎡ (41.2坪) になる。
そして、私のQ値計算では、壁はA&M社の提唱している内容と同一で、断熱部分が77%で、木部ヒートブリッジ部分が23%。A&M社の607ミリピッチのスタッドに比べると、はるかに木部の比率が多い。 だが、外壁部のU値は0.126。
1階床は404の土台・大引の上に204で両面OSB張りで、硬質ウレタンを充填。 断熱部分が90%で、木部が10%。 それでU値が0.187。
そして、天井部が実際の図面と異なるが、206の455ミリピッチ。 両面にOSBを張り、硬質ウレタンを充填は変わらない。 天井石膏ボードは、OSBに直張り。 U値は0.129。
それと、土間床と90%熱回収の換気装置を設置して、開口部のサッシやドアを0.85で計算して、Q値は0.8Wどころか0.7Wを上回った。 しかし、これはあくまでも紙上での計算値で、A邸のように、遺産調査の関係で土間コン床スラブに変更を余儀なくされた場合は、Q値が1.0W前後になる場合もありうる。

外壁壁厚.JPG

この住宅の外壁は写真のとおりで、206 (140ミリ) の両側に9ミリのOSBが張ってある。 これに加えて内壁の12.5ミリの石膏ボードの下に、204の端材を使って38ミリの配線・配管空間が設けられることになっている。

40年前のアメリカでは、工場経営を参考にして、大工さんなどの職人の生産性を上げることを必死に考えた。 その結果、工場に倣って職人の専門化を推進した。 一人の大工さんが全ての職種をこなす昔のやり方では生産性が上がらない。 最初はフレーミング工と造作工への分化。
しかし、グループ化するフレーミング工と一人で仕事をする造作工では、分類の方法が異なっていた。 造作工はさらに専門化することによって生産性がアップした。 このため、サッシの取付専門工、内部木製ドアとドア枠取付専門工、幅木と回縁の専門工、2人1組の天井ボード工、1人でやる壁ボード工という具合に‥‥。
こうした 「現場の工場化」 によって生産性が上がり、高い賃金を払いながらもコストは低く抑えられてきた。 それを先導したのが地場のビルダー。 アメリカでは、こうした地場ビルダーの供給する分譲住宅が80%を占めるまでになった。
これに対して、日本は未だに戸別注文住宅が主流。 これは、分譲の地場ビルダーが、土地投機に走り、土地の価格と建築費を一緒に上げてしまい、地場ビルダーの分譲住宅の魅力を失わせてしまったため。 このことが、地場工務店を生き延ばした。
だが、人口減による着工戸数の急激な減少は、地場工務店の存在価値危うくしている。

アメリカは、こうした 「現場の工場化」 によって地場ビルダーが蘇生したが、現場の工場化には限界があった。 次に襲ってきたプレハブ化には、一定の資本力が求められた。
その時に同時に求められたのは、壁などの緊結方式。
現場の工場化の時は、壁をはじめとした現場の一体化であった。
「壁はどんな場合でも一体化して起こさなければならない」 と 「床や屋根合板の千鳥張りがどこまでも原則」 が、金科玉条のように唱えられていた。
最初は、何とかして壁の一体化を図っていた。 しかし、プレハブ化は、壁よりも屋根の施工が最も効果的。 足場の悪い高いところでの作業は、プレハブ化された長くて重い屋根パネルと、それを楽々と持ちあげるクレーン車の威力にかなうものはなかった。
このプレハブ屋根の緊結方法に工夫がこらされて、千鳥張りにしなくても、屋根の一体化が可能になってきた。
つまり、屋根パネルも両面にOSBを張り、硬質ウレタンを充填したものが多くなってきている。

ここで、私の考えを述べたい。
北海道のような寒冷地の場合は、外断熱で外壁を膨らませることが不可欠。
しかし、関東以西の場合は、206の壁ですべてを処理をしたい。 外壁を膨らませると、どうしても手間がかかるだけでなく、耐震性が弱くなってしまう。 それと、アメリカのように外壁だけをパネル化するのではなく、屋根のパネル化も必然。
でないと、余分なコストがかかり、工期も大幅にのびてしまう。
それと、パネルのジョイントをどうすれば一体化するかと言う面で、もっと本格的な実験や研究調査が絶対に必要になってくる。
今回、A邸で採用したのはカネシンの金物。 短いネジ釘を使い、2枚の金物を並列ないしは両面に施工すれば、21.6KNの力があると書いてある。 トンで言えば2.2トン。
これが、どれだけの大きさの壁に、何ヶ所必要なのかは、この金物を使ったことがない私には分からない。 不勉強で申し訳ないが、カネシンに聞こうと思ったら土日になってしまった。
詳細は、後日に報告することで許して頂きたい。

外壁施工例.JPG

上の写真は、壁の接合部分。

カネシンの金物.JPG

上の写真はステンレスのネジクギ付きのカネシンの金物。

金物施工例.JPG
上の写真は、とりあえずパネルの外部接合部に使った例。

Iジョイスト.JPG

なお、この現場では、天井根太には208のIジョイストを、屋根タルキには210のIジョイストを607ピッチで採用していた。 Iジョイストに関する記述は、別の機会にしたい。
写真を見ても気が付くように、少し材を使い過ぎているようにも感じられる。

いずれにしても、多くの問題を提起しているA邸の現場ではある。




posted by uno2016 at 14:01| Comment(0) | 技術・商品情報 | 更新情報をチェックする

2016年02月10日

空き家の増加なくして、日本の住宅問題は解決しなかった !!


中川寛子著 「解決! 空き家問題」 (ちくま新書 820円+税)

空き家写真.JPG

最初に、この著書を一読した時、かなりにまとまっていると感じた。 しかし、再読しているうちに重大な問題点が抜けていることに気付いた。
「犬の遠吠え」 という言葉がある。
本人は、「これこそが空き家問題の解決策」 だと捉えているらしいが、これは 一つの提言にすぎず、この著作で言うのように、「これで空き家問題のすべてが解決する」 とは、どう贔屓目に見ても考えられない。
つまり、犬の遠吠え的な独善性がやたらに目につく。

著者が言わんとしていることは、「1968年の時点で、戸数が世帯数を上回っていた。 その後の人口動態などを考えていれば、戸数が増加し、日本の空き家率は大幅に増加することが分かっていた。 それなのに、政府は住宅投資額1億円に対して、波及効果が2.1億円程度にもおよぶ という住宅の波及効果の大きさのみを狙って、何一つ ブレーキを踏んでこなかった。 つまり、経済の成長のみを考え続けた。 その結果が現在の空き家率の増加になっているだけで、政府の無策の証明にすぎない」 と断定。
非常に正当な意見のように考えられるが、空き家の戸数にとらわれていて、40年前から関係者の間で議論されていた大切な論点が、すっぽり抜けている。

たしかに、1968年には戸数が世帯数を上回っている。
私が住宅ジャーナル誌の編集長を命じられたのも、その前後だったと思う。
業界内の人々に呼びかけて初めて42人からなる 「アメリカ住宅産業視察団」 を派遣したのは翌1969年。 その時、初めて地場のホームビルダーを中心としたアメリカの住宅産業の 合理的なシステムの存在を発見した。 翌々年には100人近い人々が アメリカの合理的で安価で、高性能な住宅に直接触れて、感嘆の声を挙げていた。
その時、日本で建てられていた住宅は、ペラペラの新建材を使った薄っぺらい住宅だった。 とても資産として評価出来る代物ではなかった。 何とかしてペラペラの資材を厚い資材に変え、断熱材をたっぷり使い、チエを絞って現場の生産性をあげ、アメリカ並の価格で 高性能な住宅に一変させることこそが、当時の住宅業に携わっている者に課せられた最大の課題。
そのためには、北米で広く採用されているツーバイフォー工法を、誰でも自由に使えるようにするために、オープンな形で 導入する必要があった。 その必要性を説いて回ったら、当時の建設省の住宅局長、指導課長、生産課長をはじめ全局員が理解を示してくれた。 それだけではなく金融公庫のすべての技術者が、理解を示してオープン化に協力してくれた。
かくて、41年前にツーバィフォー工法はオープン化された。

つまり、新建材のペラペラの住宅をいくら建てても、日本にストックとしてふそわしい住宅が増えることにはならない。 また 戦火をくぐり抜けてきた古い在来木軸は、断熱材を一つもまとっておらずスカスカの住宅。 こうした住宅を追放して、ストックにふさわしい 「高性能な住宅づくり」 が求められていた。
当時、真剣に議論されていたのは、「ストックとしてふさわしい住宅とは、どんな住宅であるべきか」 ということであって、「空き家が目立つようになってこなければ、このテーマが社会的に認識されることはなかろう」 と私は考えたし、当時の官僚の考えも同じだったと思う。
そこで、カナダ政府が主体になって進めようとしていたQ値が1.3~1.4Wの 「R-2000住宅」 に眼をつけた。 幸い建設省の推薦を得て ツーバィフォー協会として取上げることになった。 大手の三井ホームや地所ホームも最初は意欲的で、協力的だった。 絶対にうまく行くはずだと信じていた。
「R-2000住宅の設計・施工マニュアル」 も完成し、研修も無事に終了した。 そして、実施段階に入った時点で、工事を外注に出しているツーバイフォー大手各社が、カナダでは軽く突破していた気密性能(C値) の 0.9c㎡/㎡ がクリアー出来ないことが判明。
何度となくトライさせたが、0.9c㎡/㎡の壁が突破できず、事前に派手なPRをしていたこともあって、クレーム商品になってしまった。
意慾のあったツーバィフォーの大手メーカーでこの有様。 三井ホームや地所ホームが出来ないことは、鉄骨プレハブメーカーばかりでなく、ミサワや住林に出来るわけがない。
かくて、日本の大手住宅メーカーや国交省にとっては、「気密性」 が大きな目の上のタンコブになってきた。

結局はどうなったか?
ご存知の通り、国交省のあらゆる書類から、「気密性」 という言葉を消してしまった。
いいですか?
マンションに住んでいた多くの住人が、あこがれの 「戸建て」 に住み替えたら、冷たい隙間風にあたって、「マンションの方が一番暖かい」 と誤った認識を持っているのが現状。
R-2000住宅の0.9C㎡/㎡さえクリアー出来なかった日本の大手ハウスメーカーに、パッシブハウスの0.3c㎡/㎡という気密性能をクリアー出来ると思いますか?
以来、大手住宅メーカーと国交省にとっては、ヨーロッパのパッシブハウスはご法度に。 Q値に変わってUa値を設定したりして、「ヨーロッパと日本は基準からして違うのだ」 ということを見せつけようと懸命な努力を払っている。
何のために今までQ値を使っていたのか?  Q値を変える必然性は本当にあるのか?
そんなわけで、日本の省エネ性と気密性は完全に遅れてしまった。
当初の予定よりも 遥かに遅れてしまった責任は、そのほとんどが高断熱・高気密化を 意識的に嫌った大手住宅メーカーと国交省にある‥‥というのが私の判断。

たしかに、住宅が持つ関連業界に及ぼす影響の大きさから、景気対策の一貫として新設住宅の建設が考え続けられてきたという事実は、否定出来ない。 そうした側面も多いにあるだろう。 しかし、大手住宅メーカーと国交省の慣れ合いで、本来取るべき政策がおろそかにされてきたというマイナス面の方が、より大きかったと私は考える。
つまり、日本に残されている空き家の80%以上が、欧米の常識から言って、住めるような代物ではない。 本来は、早々に潰すべきもの。
それが、大手住宅メーカーの我欲と国交省の恣意的な行為によって、意識的に取り残され、放置されてきたまでのこと。

7年前にドイツへ行った時、ドイツ政府から中高層の賃貸住宅の断熱改修の現場へ案内された。
その断熱改修の現場は、旧東ドイツ時代に建てられたもので、5階建の賃貸住宅から、8階建まで軒並みに断熱改修工事がが行われていて、半日にわたって詳細な説明を受けた。
RC造の外側に100ミリ厚のロックウールが施工され、半湿式の塗壁仕上げ。 サッシも同時にPVCのペアに取換えられていた。
それだけではない。 バルコニーには吹きさらしではなく、アルミサッシを入れて南面の暖かさを確保するとともに、北面の階段室にもサッシを入れて、寒さを防いでいた。 換気に十二分に配慮をした上で、屋上空間を利用して各戸に配る温水施設も施工されていた。
日本の公団住宅や公営住宅も、このような断熱改修を行えば、どれほど多くの人が助かるだけではなく、どれほどエネルギーの節減に貢献出来ていることか? 
ドイツ政府がやっていたことを、国交省の役人が知らない筈は絶対にない。 彼らにドイツ並の前向の考えがあったなら、日本の賃貸住宅はマンションも含めて根本的に変わっていたはず?
こうした発想の裏づけのない空き家対策は、果たして対策といえるだろうか?

そしてこの著では、やたらに土地の持つ利便性が強調されている。
たしかに、賃貸住宅やマンショなどで土地の立地が持つ利便性が強調されるのは理解できる。
だが、冬暖かく夏は涼しくて安眠が出来、子供を安心して育てられる燃費がほとんどかからない住宅であれば、例え通勤時間が片道30分余分にかかったとしても、全ての人が利便性だけで住宅を選ぶだろうか?
そうした代替案を提案出来ないところにこそ、現在の空き家問題の本質があるような気がしてならない‥‥。

ともかく、人口が少なくなってゆくのだから、そこいらの不便な空き地を利用したアパート業のほとんどが成立しなくなってくる。 土地があれば、何とか食べて行けた時代は終わり。 そんなアパートを相続してくれる人もいなくなる。
と同時に、親が死んだら、下着や雑貨と一緒に住宅を処分するということを真剣に考えなければならない時代が、すぐそこまできていると思う。
そして、それこそ2世代にも3世代にもわたって、住宅として愛でられ続けるような、ホコリがなくて空気がどこまでも澄んでいて、燃費が少なくて済むストック住宅を建てることこそが、一生の願いになってくるのではなかろうか。


posted by uno2016 at 08:09| Comment(0) | 技術・商品情報 | 更新情報をチェックする

2016年02月05日

地スギを多用した高橋建築のパッシブハウスの実態!


消費者の方から、「unoのホームページに掲載されている有力地場ビルダーの中で、埼玉県で家を建ててくれそうなビルダーを軒並み訪ねた。 中で一番気に入ったのは 秩父を地盤とするパッシブハウスの高橋建築。 しかし、同社のことは一度もホームページには掲載されていない。 果たして私の識見が間違っているのかどうか、一度訪ねて見て欲しい」 というメールを頂いた。
秩父と言うと、雪が降った後の正丸峠が気がかり。 正丸トンネルをスノータイヤを履いていない私の車が、無事通過できるだろうか? そこで 高橋建設の社長に電話したら、「私が西武秩父駅まで迎いに行きます。 どうか、西武線でいらしてください」 とのこと。
西武秩父からの道はところどころで氷が張っていて、電車で行ったのは正解だった。

ご案内のとおり、パッシブハウス運動の中心になって頑張っている森みわさんとは、7年前からよく知っている。 そして私自身はパッシブハウスの 「隠れファン」 の一人だと自負している。
ただし、森みわさんが設計人だということもあって、会員約100人のうち設計事務所が60%で、ビルダーは40%に過ぎない。 パッシブハウスを本格的に普及させるには、私の経験から言っても地場に根を張った100人以上の意気のよい地場ビルダーが結集していなくてはならない。
だが、森さんが頑張って組織したグループ。 私のような他所者が口を出したら森さんがやり難いだろうと遠慮して、北海道・網走の光輝建設しか私のホームページには掲載していない。
私が組織している仲間は、どちらかというとR-2000住宅ではトップを切って走っていた仲間。 かつては破築の勢いを持っていたが、パッシブハウスのような若さと勢いに欠けるのは事実。
それに、肝心の除加湿問題では、大きな価格問題 という壁にブチ当って、右往左往していることも事実。

そんなわけで、出来るだけパッシブハウスの皆さんを私の方で遠ざけてきた。
高橋さんは 昔は私のホームページをよく読んでいたいたよう。「たが、一条工務店の記事を読んで、一条工務店にはかなわない」 と思って、読むのを中断して新しい仕事を探していたという。 しかし 一条店の現場を見たら仕事が雑なので自信が蘇ってきた。「現場力で一条工務店には勝てる」 という自信が付き、以来一条工務店と相見積もりになっても、怖くはなくなった。
そして、数年前にパッシブハウスの存在を知ったが、秩父では 誰もモデルになろうという人間が見当たらない。 そこで弟に頼んでパッシブハウス第1号になってもらった。
弟は4人の子どもを持つ大家族。 訪れたのは火曜日。 一家で 出かけているいるということで、その無人のモデルを案内していただいた。
まず、ビックリさせられたことがある。
場所が秩父と言うことで、朝の外気温度が -10℃まで下がるという厳寒地。 北海道なみということで、東京周辺で私がやってきた 「家づくり」 の基本が違うことに驚かさせられた。

開口部大のT邸.JPG

ともかく、窓が大きいのだ。
写真は南面のみだが、東面にも大きな開口部がある。
そのいずれもがトリプルサッシ。 国産のスギを使った立派なサッシ。
ご案内の人も多いだろうが、数年前にパッシブハウス・ジャパンが音頭をとって、国産のスギをヨーロッパの工場に送り、完成したサッシを日本へ逆輸入していたもの。 一時は、この方式がもてはやされていた。
パッシブハウス・ジャパンの成功例と考えられたが、国産のスギを提供していた製材協組が諸般の事情で提供をストップさせたので、残念ながらこの試みは途中で挫折してしまった。 誠にもって残念だというしかない。
ご案内のように、2013年に認定低炭素住宅用のガラスの基準が、トリプルガラスでは、以下の5品種のみに限定された。
       ガラスの仕様              ガラスのみの日射取得率
トリプルガラス ■うちLow-Eガラスが2枚 □日射取得型    0.54
                          □日射遮蔽型    0.33
トリプルガラス ■うちLow-Eガラスが1枚 □日射取得型    0.59
                          □日射遮蔽型    0.37
トリプルガラス ■Low-Eガラスがないもの             0.72

つまり、ペアーサッシには、Low-Eガラスに依らなくても、熱戦反射ガラスがあった。 とくに熱戦反射ガラス3種を使えば、ガラスのみの日射遮蔽率は、0.16が認められていた。 したがって、日射遮蔽に関しては困ることが少なかった。
ところが、トリプルガラスになったとたんに、熱線反射ガラスが使えなくなり、苦労をさせられた。 本来のU値が優先され、日射遮蔽は本来の軒の出を大きくするか、外付けブラインドを多用するしかなかったのである。
そうした、夏の日射遮蔽のことしか考えていなかった。 そこへ日射取得型のガラスが飛び込んできたから、パニクッテしまった。

高橋建築では、当初Low-Eガラスのない0.72のガラスを採用していたよう。 それが最近ではLow-E1枚だけの0.59の日射取得型に変更したらしい。
正直なところ、私にはモデルハウスの冬の直射日射が暑すぎて、途中から陽の当らない場所へ移動させてもらった。 それほど日射取得型は、今までのガラスとは異なる。
「たしかに、日射過多の場合もあります‥‥」 と、高橋さんも認めていたが、ガラスの違いの差の大きさは、予想以上であった。
ということは、日射遮蔽型住宅のみに力を入れてきた私には、日射取得型住宅に対しては何一つ発言の権利がないということ。 24時間連運転で、空調換気・除加湿を大前提に考えていた私の常識は、この日射取得型住宅では一切通用しない。
この家では、冬期の朝の外気温が-10℃にもなるのに、室温は前日に曇った場合で16℃、前日が晴れた日には17℃以下にはならないという。陽の出た日の室温は、平均して26~27℃だという。
そして、4人の子供が居るせいで夜間の内部発熱も多いのだろう。 夜の9時過ぎになっても室温は23℃からなかなか下がらない。 したがって、この家では原則として 《無暖房》 で生活をしているらしい。 
ともかく、高橋社長は、実測のデーターを基に話を進めるので、私は口を挟む暇は皆目なし。 それにしても、《無暖房住宅》 というものを現実に見せられると、言葉がない。 
入居者の母や子どもの意見を聞きたくなったほど。

地杉のT邸.JPG

そして、この家は金物工法ではなく、在来の木軸。
私は公言しているように、北米のツーバイフォー工法の合理性に感動した方。 10数回現場を訪ねたが、そのたびに発見があった。 そして、神戸の激震地と中越地震の震度7強と思われた川口町の4~5寸柱の倒壊現場を見て、「もう木軸の時代は終わった」 と感じた人間。
しかし、金物工法が開発されて、通し柱が折れない住宅の出現を見て大感動した男。
しかし、各地に建てられている金物工法を見て、やたらと金物が使われていることと、使っている集成材の梁が多すぎて、木材の材積がやたらに喰っていて価格が高すぎる。 この高価格にオンブして、大手住宅メーカーはすべて金物工法へ鞍替えした。
つまり、耐震性は飛躍的に高まったが、価格も飛躍的に高くなった。
なぜ、日本の木軸の人は、昔からの軸組にこだわり、北米の合理的で安価なツーバイフォーの勉強をしないのだろうか?  木軸の中にツーバイフォーの合理性を取入れたら、簡単に耐震性と防火性が上がるのに、何故取入れようとしないのか?  日本の木造住宅関係者は、消費者のことを本気で考えたことがないのではないか?
これが、長年の私の疑問。
この疑問を高橋建築のモデルハウスを見ても感じた。 もっとも、建築中の現場を見ていないから確言は出来ないが、なんとなくそんな臭いがした。
しかし、このモデルは同じ木軸であっても、建てた人間の思い入れが色濃く反映している。
居間とダイニングキッチンの中心に位置している6.5寸角の4方無節の柱。 これは、前社長が有りカネをはたいて大量に仕入れたものらしく、デンと居座っていて楽しくなってくる。
しかし、床まで柔らかい地スギを使っているので、毛羽立っているのが気になった。「床材には広葉樹の堅木を使わねばならない!」 と教わった逆のことを敢えてやっていたので、それだけの拘りがあるということだろう。

T邸外壁.JPG

なお、この家のQは0.82Wで、C値は0.2c㎡/㎡。
したがって、外壁にはフェーノール・フォームのネオフォームを、充填60ミリ、外断熱に66ミリを使っている。

T邸屋根.JPG

また、屋根裏には、充填60ミリと、外断熱として50ミリ2枚、計100ミリのネオフォームを施工している。 写真はタテになっているので見難いが、ちょっとクギが気になった。

T邸邸換.JPG

そして、モデルハウスは地上に出た半地下室を持っており、収納場所になっているが、その中に輸入のバウル社の90%熱回収が可能な換気装置がおかれていた。
バウル社を選んだのは、熱回収が確実だということと、各室へは100φのダクトを使っていたためめに給気量が確実であったがため。 しかし、最近ではローヤル電機の全熱交に替えたので、臭いに関するクレームは皆無だが、「音がウルサイ」 というクレームがそれなりにあるとか。

いずれにしろあの秩父で、無暖房住宅を目撃出来たことは、非常に役に立った。


posted by uno2016 at 12:36| Comment(3) | Q値0.8W以上の住宅 | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。