2016年03月30日

10数年前の「ソーラーサーキット」でさえ、これほどの“褒め言葉”



深谷賢司著「家族の健康を守る家」(PHP 1300円+税)

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著者は脳神経外科の専門医。
2005年に自宅を建てる前に、モデルハウス巡りをして、大手住宅会社の デザイン偏重主義や珍しい内外層建材を多用している 「目眩まし住宅」 に、疑問を感じた。
なぜなら、生まれた自宅を含めて、すでに木造1戸建てや 鉄骨造のアパート、鉄筋コンクリート造の官舎など、すでに8戸もの住宅に住んだ経験があり、どの家も寒く、しかもどの家でも結露が激しくて窓の内側はグッショリ濡れていた。 それだけではなく、引越荷物を出すとベットの下が水溜りのように濡れていたり、家具の裏側にはカビがビッシリと生えていた。
寒さのせいで 家族はよく風邪をひいたり、カビのせいで家族の多くがアレルギー症状を見せることも 珍しくなかった。 こうした根本原因の対策を、住宅メーカーの 営業マンに聞いても、納得できる返事に巡り合えなかった。
そこで、住宅関係の本を買い込んで、自分で猛勉強をすることにした。

福井県生まれの著者は、金沢大学医学部を1994年に卒業し、国家試験にも合格して 晴れて医者として金沢大学付属病院の脳神経外科に配属された。
ご存知のように、大学病院というのは非常に上下関係が厳しいところ。 若いドクターは見習として、ひたすらに教授の指示通りに動かなければならない。 下積み生活に耐えねばならない。
そして1年も経った頃に、やっとメスを持つことを 許されるようになる。 と同時に、やはり教授の指示で、あちこちの病院へ派遣されるようになる。 派遣先では先輩ドクターに密着して、さらに修業を重ね、腕を磨いてゆく。 
最近は、ここまでハードな指示は無くなったようだが、著者が 20歳台から30歳台の前半まではそれが当り前えに横行。
医学部を出て、医師免除をとれば、歯科と麻酔科以外はあらゆるジャンルの診察が行える。 内科でも外科でも、耳鼻咽喉科でもOK。 3~5年の経験で1人前になれる場合もある。

しかし、著者が選んだ脳神経外科というジャンルは厳しい。 生半可な知識や技術、経験値で患者さんと接することは許されない。
万が一、手術に失敗してしまえば、助けられる命も助けられないこともある。 失敗の仕方によっては、患者さんが一生歩けなくなる危険性もある。 それだけの重責を負う脳神経外科の世界ではこのような厳しい修業を、最低でも10年は積む必要があると言われてきた。
金沢医大が管轄する範囲は、北陸3県。 その中で 鉄骨造アパートや木造1戸建て、RCの官舎を含めて 以下の7ヶ所に派遣された。

①石川・金沢市  鉄骨造アパート  築20年以上
②石川・七尾市  RC造 官舎      築20年以上
③福井・福井市  木造1戸建て   築20年以上
④富山・高岡市  鉄骨造アパート  新築
⑤石川・金沢市  鉄骨造アパート  築5年
⑥富山・高岡市  木造1戸建て   築3年
⑦富山・富山市  鉄骨造アパート  築15年

結婚が早かった著者は、転勤に次ぐ転勤、引越しに次ぐ引越しにの度に、家族も一緒に引越し。 しかし、子供の数が3人を越えたあたりから引越作業が重荷になってきた。 つまり、30歳台の前半まではそれでも頑張ってきた。 だが、子供が次第に大きくなってくると、簡単に 「また引越しだ」 と言いにくくなってきた。 2001年に博士号をとった機会に、「大学病院を辞めて、どこか別の病院で働く」 ことを決意。
2003年に大学病院をやめて、京都・福地山市の小さな病院に移った。 その病院の内科の先生が京都の綾部ルネス病院に移ることになり、一緒に誘われた。 そして、福地山市でも木造1戸建ての借家に住んでいたが、副院長にも昇格したので、本格的にマイホーム計画に とりかかったという次第。

独学で住宅の勉強をしている中で、著者が覚えたのは、Q値とC値。 この言葉は、単に日本だけでなく、世界各国に通用する 「住宅の性能値」 を示す言葉。
どんなにデザインが良くても、豪華な建材を 使っていても、Q値とC値が低かったら、夏は暑い家になるし、冬は結露だらけの寒い家になってしまう。 このQ値とC値こそが、住宅の性能をピタリと表現するものだと筆者は確信。
ご存知のとおり、Q値は 「熱損失係数」 といって、外壁・天井・床・換気などの各部位から熱量を計算し、これを延床面積で割って熱損失を計算。  今まで東京などは2.7W/㎡K、北海道が1.6W/㎡Kというのが次世代住宅の基準で、札幌市では0.5W/㎡Kという すごい基準を作り、これが頭の中にに叩きこまれている。

ところが2013年に省エネ基準が改正され、Q値ではなくUA値 (外皮平均熱貫流率) で表現されることになった。 つまり 今まで床面積という限られた面積で表示していたものが、約3倍もの広さで割られる。 つまり、今までQ値が2.7Wであった東京のUA値が0.87Wと1/3以下になってしまった。 同じことで、北海道の1.6Wは、1/3以下の0.46Wということになる。
つまり、2.7Wと1.6Wでは大きな1.1Wと大きな差があるように感じるが、0.87Wと0.46Wでは、たった0.41Wしか違わない。 同じことで、鉄骨プレハブと高断熱木造は、4.0Wと2.7Wでは1.3Wも違うが、UA値だと1.35Wに対して0.87Wだから、たった0.48Wの差でしかない。
いかに、国交省の関係者が詭弁を使おうとも、明らかに プレハブなどの大企業に摺り寄った住宅局の醜さがクッキリ浮彫りにされている。 その住宅の性能の悪さを、Q値をUA値に 変えることによって、差を小さく見せる小細工以外の何物でもない。

C値というのはご案内の通りで、「隙間相当面積」。 1㎡当り何c㎡の隙間があるかでその家の隙間を測定する。 誰しも知っているように、隙間の大きな家は冬は寒いし、夏は外から高温多湿が遠慮なく入ってくる。 隙間の無い家ほど暖かくて涼しいことはネコでも知っている。
そのことに著者は気が付いた。 以来、筆者は住宅メーカーの説明会のある度に 「ところで お宅の住宅のC値とQ値はどのくらいですか?」 と、必ず聞くことにしている。
ところがある著名な住宅メーカーの営業の責任者の答えは、信じられないものだった。
「えっ! それはなんのことでしょうか? すみませんが、聞いた事がないので分かりません」
21世紀になったばかりの頃は、私などが騒いだので、東京の大手の営業マンは Q値とかC値についてはそれなりに知識があったはず。 だが福知山市では、まだ一般的には知られていなかったのであろう。 それにしても勉強していなさすぎると、著者は呆れている。

しかし、住宅を建てるとなると、その前に土地を手当てしなくてはならない。 併行して進めている中で、福知山・小谷産業が高台の良い土地を紹介してくれた。 その土地が気に入ったので、ついでにどんな家を建てているのかを聞いてみた。 そしたら、「ソーラーサーキットの代理店もやっているという」。 あまり聞いたこともない家だが、持論の 「その ソーラーサーキットというのは、Q値とC値はどれくらいなの?」 と、何1つ期待もせずに聞いてみた。
そしたら、営業担当の大槻氏が 「C値は1.0c㎡/㎡を目指していますが、実際には建築途中の計測では0.5c㎡/㎡程度の数値が出ています。 Q値については、設計時で2.0Wを目標にしています」 と言うではないか。
いままで、大手住宅メーカーに聞いても、まともに Q値やC値に対して正しく返答が出来なかったのに、田舎の小さな不動屋さん兼工務店が スラスラと答えてくれたことに対して、著者は感動して、一気に小谷産業ファンになってしまった。 そして、ソーラーサーキット工法を躊躇することなく選んでいる。
したがって、残念ながらこの著は 「ソーラーサーキット礼賛」 の著になってしまっている。 著者にもっと選択眼があったなら、ソーラーサーキット以上の 超高気密高断熱住宅が選択出来たのに、と惜しまれてならない。

著者が書いているように、ソーラーサーキットは外断熱で2重の通気層を持っている。 一つはいつも開いている通気層で、この通気層は北海道で開発されて 全ての高気密高断熱住宅に採用されているもの。 そして、夏期だけに開くもう一つの通気層を 内側に持っている。 メーカーの説明では、夏期に涼しい空気を通すため と言っているが、夏期は高温で湿度が高く、内部の通気層はやたらと工費を食うだけで、全く役立ってはいない。 もし、ダブルの通気層が役立つと言うことが分かれば、他の業者も一斉に採用するはず。 なのに、海外を含めて 誰一人として採用したいとは考えていない代物。
それよりも必要なのは、夏の除湿であり、冬期の加湿。
このことは、いまさら書くほどでもない。 すべての読者は熟知済み。
そして、カネカがソーラーサーキットを売出した時点で、Q値がカネカよりも優れていたカナダのQ値が1.2~1.4WのR-2000住宅が売出されていたし、新住協では文字通りキュー・ワン (Q-1.0) 住宅を売出していた。 いずれも、Q値・C値ともソーラーサーキットを上回っていた。
しかし、それを施工出来るビルターが地場に居なかったということだろう。
それどころか、数年前からドイツで大流行の 「パッシブ・ハウス」 が日本でも売出され、日本の高気密高断熱住宅というと、Q値は0.8W以下で、C値は0.3c㎡/㎡以下が常識になってきている。
国交省が定めたトップランナー方式の1.9WというQ値に拘っているのは、性能が出せないプレハブなどの大手メーカーばかり。

だから、その低性能が目立たないように、UA値などという小細工をやると共に、政府のあらゆる書類から 「気密性」 という最も大切な性能を抹殺してしまった。
これをやった大手プレハブメーカーと国交省住宅局のメンバー全員が、頭を剃って国民に詫びる必要が絶対にある。
そして、残念ながらカネカも深谷氏も、その性能の低さを恥じて、少なくともR-2000住宅なみにまで、性能を上げる義務があると、私は確信するのだが‥‥。 




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2016年03月25日

現場に明るい3氏が「復活した日本の物作りの生産性の高さ」を語る。



中沢孝夫・藤本隆宏・新宅純二郎鼎談「ものづくりの反撃」 (ちくま新書 820円+税)

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この3氏の中で、福井大経済学部の中沢孝夫氏は、中小企業の専門家。 著作は3冊程度だが読んでいた。 また日経、朝日、NHKでも活躍していて著名。 しかし、東大の経済学教授の藤本氏と新宅氏は知らなかった。 藤本氏は自動車などものづくりの著書も多く、新宅氏は2014年に行った電機連合の調査では中心的に関わった一人で、物作りには詳しい。
つまり、3人とも製造業が好きで、日本は今後においても貿易を左右するのは、どこまでも製造業が主流である貿易財系だ、と考えている。
アメリカのように、製造業がダメになっても コンピューター業が勃発し、製造業にとって変わると言うようなことは日本ではあり得ない。 つまり、日本では金融とか情報サービス業はそれなりに大きくなっても、カネを稼げる産業になるとは考えていないということ。
貿易財系の製造業こそが日本を救うと確信している。

ひところ、私などは 「あんなに輝いていたかに見えた日本の半導体や、テレビ、白物家電では、韓国や台湾だけでなく中国にも追い抜かれようとしている。 もはや、日本国内では製造業は成立たないだけでなく、海外へ出て行ったメーカー達も、軒並み負けてしまうのではなかろうか。 日本という国は、今後どうなって行くのだろう‥‥」などと、あらぬ心配ごとで 安眠出来ない日が続いたことがあった。
つまり、「製造業は人件費の安い後発諸国に一任して、日本は金融とか サービス業に必然的に移管してゆかなければ、生きて行けない国」 になるという一部の人が唱えることに、何となく同調していた。
しかし、この著を読んで安心した。
日本のメーカーは、中国などの各国へ出て行ったことによって、日本の生産性を どこまで上げれば、国内のメイン工場が維持してゆけるかが分かった。 本来は、韓国のサムスン辺りが、そうした情報を公開していてくれれば 良かったのだが、こうした内密の情報を公開する企業というのはあり得ない。
日本が中国や、タイ、インドネシアに工場を建てたことによって 得られた情報というのは実に貴重なもの。

ベルリンの壁が破られ、東西の連戦が終わったのは1990年。 この時、南北問題の壁も破れた。
そして、日本のすぐそばに人件費が日本の1/20という中国が出現した。 このため、ほとんどの企業が1990年代に中国へ工場を建てて進出した。 しかし、賢明な日本の現場長は、日本の工場をすべて閉鎖して中国などの東南アジアへ移すことをしなかった。
こうして、「マザー工場」 は日本に残された。
しかし、人件費だけが日本の工場へ押し寄せてきた訳ではなかった。 100円を切る 円高という為替変動も、同時に日本のメーカーを直撃した。 こうして、1/4世紀にも亘って 貿易財である製造業を苦しめた。
この時、日本の 「マザー工場」 は、火事場のバカ力を発揮してくれた。
たしかに、中国に工場を持って見て、初めてべらぼうに安い賃金で、どんな人が 雇用出来るかが分かってきた。 また、動き始めた中国工場の実際の生産性を測って見ると、予想以上に生産性が低いことが分かってきた。
設備投資をした以上は、中国工場の生産性を上げ、利益を確保しなくてはならない。 そのためには何をなすべきかということが、「マザー工場」 ではわかってくる。
と同時に、日本の地方にある 「マザー工場」 とは言っても、実質地場の中堅工場に過ぎない。
いつ親会社から 「閉鎖」 を叫ばれるかも分からない。 その閉鎖を避けるには、今の生産性をどこまで上げたら、中国企業に対抗してゆけるかも分かってきた。

著者らが訪問した企業では、各自1~2万社にも及ぶが 2000年過ぎからトヨタの工場で行われていた 設備投資をしなくてもラインの改善などによって、生産性が2年で2倍、3年で3倍、5年で5倍、10年で8倍という高い生産性をあげる企業が続出してきた、という。
調査したのは以下の10項目。
①独自製造技術  ②量産立上げ ③新製品提案 ④外部不良率 ⑤顧客満足度 ⑥柔軟な生産能力 ⑦生産性 ⑧納期 ⑨新製品投入回数 ⑩製造コスト の10項目。
これを、国内のマザー工場と 中国以外の外国73社、と中国拠点の比較47社で調べたところ、なんと⑩の製造コスト以外の9項目では、圧倒的に国内のマザー工場が 勝っていた。 つまり9勝1敗という成績。 そして、特筆しなければならないのは、中国だけではなく世界各国と比べても国内のマザー工場の価格が安いという企業が10%も占めていた。 これには、3氏も驚いていた。
つまり、10勝0敗という成績の企業が、日本には誕生してきていた。

この結果を見て、つくづく考えさせられた。
というのは、住宅の坪単価。
アメリカでは価格を安くするために、おそらく大都市周辺では70%近くが分譲住宅だと思う。
そして、日本のように土地を持っていて、フリー・デザインの住宅の占める比率が 10~15%程度になってきているのではないかと推測。
つまり、一期に30~40戸まとめて建てる分譲住宅形式でないと、価格が安く出来ない。 従ってアメリカでは分譲住宅ブーム。 しかも、コストを切り下げるために、一期に30~40棟をまとめて建てているし、プレハブ化による生産性の向上も高い。
日本では、建築労働者の動きを徹底的にチェックして、貿易財系の製造業のように、2年で2倍、3年で3倍というような生産性向上運動が起こしたためしがない。
日本の消費者の住宅に対する拘りにやたらと配慮して、外国資本が 乗出してこれないことに安住して、価格は一向に下がらない。
つまり、国際競争力を本当に経験していない。 その住宅産業界のひ弱さが、この本を読んでいてやたら気になった。

さて、この著書ではドイツ型物作り論として 「インダーストリー4.0」 とか 「IoT」 とか 「AI」 を俎上に乗せて議論しているが、やはり参考になったのは、元気のよい電機系の日本の工場の2つの共通点。
1つは、単に工場だから 「ものを作ればよい」 というだけではいけない。 つまり 製造工場の設備設計力や開発・設計力を持っている会社が強いと言うことが良く分かった。 販売力まで持つ必要はないが、顧客からの クレームを聞く 「カスタマー・サポート・センター」 を近くに持っている工場は強い。 製品にフィード・バックするなど、誰に何を売るのか、という視点を持っている工場ほど強い工場はないと感じた。 つまり、日本の製造業の強さは、その辺にあることが明確になってきた。
それと、電機連合のアンケート調査で、海外工場ではなく、国内の マザー工場に間における現場力の違いは何によるものかという原因分析も行っている。 その結果、優れた現場力は、「見通し、風通し、見える化が進んでいる工場だ」 というキーワードが浮かんできた。

「見通し」 というのは、職場の中のあらゆる階層で、10年後の会社の姿や自分の姿が前向きに描けているか、否かというもの。 もちろん、全てが描いた通りにはならないが、「この職場は10年後も続いていて、その中で自分がどんな役割を果たしていると読み取れたら強い力になる。 これはホワイトカラーに限らず、ブルーカラーにも共通している。
「風通し」 は、横だけではなく縦のコミュニケーションの度合いを測るもの。 リーダーとワーカーが話した場合、その提案をリーダーが取上げ、その上の課長と どれだけコミュニケーションしてくれるか? あるいは怖くてものが言えない雰囲気か? といったこと。
最後の「見える化」 は、いわゆる標準化、ルール化。
この3つについて聞いた訳だが、やはり良い職場は3つとも高かった。
この調査は電機業界が対象だったので、先行きが不明で 事業戦略が描けず、トップも中堅も自信喪失の時代で旗の振り手がない。 その中でも、こっちに行けば出口がありそうだと、リーダーが率先して引張っていた現場は、皆が前向きで、しっかりした成果を出していた。
工場長自身が営業マンになって、顧客開拓に走り回っている現場は、全員が それを支えようと活き活きとしていた。

辛酸の苦労を舐めた電機業界の工場では、パトロンの存在価値が大きかったかもしれない。
その工場の出身の経営者とか、そのエリア出身のパトロンとしての経営者が いたことで、本社が簡単にその地域の工場を閉鎖出来なかったこと。
しかし、皆で生産性を上げてきた 日本の現場力の強さは、中国もインドも、タイ、インドネシアも分かってきた。 どの国も日本に学んで、生産性を上げていって貰わねばならない。 そして、人口減少に向かう日本は、これからは世界の大企業を目指す必要はない。
一体感を持った仲間意識と信頼感で、世界から一目置かれる存在になって行けば良い。
貿易財系の製造業というのは、そんなものだと知ることこそが肝要だと、3人の筆者は声を大にして叫んでいる。

久しぶりに、ワクワクする本に出逢えたことを感謝したい。


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2016年03月20日

どうする地スギの処理! 住宅局に屈した林野庁の解決策は。



一昨年暮れから昨年秋にかけての林野庁の鼻息は荒かった。
「これで、伐採適齢期を変えた地スギを、CLT (クロス・ラミネーテッド・ティンバー) で、何とか処理出来る見通しが得られた‥‥」 と、ほっとした表情。
それが、4月に発表される住宅局の告示で、一転してズタズタのものになるのではないかと心配に‥‥。
ご存知のように、私は取材の第一線から引退して久しい。 これから書く記事は、住宅局や林野庁を取材した上のものではなく、責任を持てる内容ではない。 どこまでも推測記事。
したがって、「こんなバカなことを考える者もいる」 と、一笑してもらって良いもの。 そんな内容にすぎないことを、事前にお断りしておきたい。

小さい子供の頃に、次のような唄がラジオから流れてきた。
♪ むかし むかし そのむかし  椎の木 林の すぐそばに
  小さい お山が あったとさ あったとさ
  まるまる 坊主の 禿げ山は  いつでも みんなの 笑いもの
  「これこれ スギの子 起きなさい」  お日さま にこにこ 声かけた 声かけた

  1(ひい) 2(ふう) 3(みい) 4(よう) 5(いつ) 6(むう) 7(なな) 
  8日(ようか) 9日(ここのか) 10日(とうか) たち
  にょっきり 芽がでる 山のうえ 山のうえ
  小さなスギの子 顔だして  「はいはい お日さま こんにちは」
  これを眺めた 椎の木は  あははの あははと 大笑い 大笑い‥‥

昔の児童唱歌にあった、お国のためにと、ところ構わずに植えられた杉の木が、軒並み伐採期を迎えている。 その伐採に 困り果てていた林野庁が、恰好の処理先と目を付けたのが、ヨーロッパだけでなくカナダでも注目されはじめてきたCLT。
何しろ、地震のないヨーロッパでは、2~3年前から、この木質の5センチ厚程度の無垢板を交互に接着したCLTが、6~8階建の中高層ビルにも使われ出し、地震国のカナダでも採用を検討しているというニュースが飛び込んできた。
「厚いスギの無垢材が使えるCLTがあったとは。 しかも、ヨーロッパでは6~8階建のビルにも使われているそうな。 こんな有難い救世主か現れてくるなんて‥‥」 と、林野庁が 欣喜した風景は、よく想像出来る。

ところが、困ったのは国交省の住宅局。 いままで 木造だけでなく、鉄筋コンクリート造や鉄骨造を含めて、建築基準法で一括管理してきた。 確かに40年前に、北米のツーバイフォー構造が、住宅局長と金融公庫の全面的な支援によって、告示の中に書きこまれたことがあった。
しかし、建築基準法は住宅局の命綱。 他所の人間が、どんな理由があるにしろ 勝手に書え換えたり、付け加えることは絶対に許されない。 局内には、そんな不満が充満していたので、K課長が局内向けに否定的なアナウンスをしなければならないこともあったよう‥‥。
これに対して林野庁は、「与党の最大の応援団である山持ちが、スギの伐採問題で困っている。
このことは、通商産業省も総務省も良く分かっている。 分かっていないのは、国交省の住宅局だけだ」 と、圧力がかかったのだろうと推測。
その結果、意固地になっている住宅局の言い分が認められて、告示という形になった‥‥。

この告示の原案を見たら、今までの建築基準法と変わるところがない。 住宅局が作成したとなると、こんなものにならざるを得ない代物。
基準法で虐められてきた人間にとっては、当然すぎるほどの内容。 むしろ 攻める側の林野庁の配慮の足りなさが目に付く。
ドイツの南に接しているオーストリア。 ここでCLTで 20年近くの実績を持っているのはKLH社とTHOMA社。 2社ともに厚い無垢の板を交互に積層して、鉄筋コンクリート造なみの強度を持たせたことには変わりがない。 ただし、KLH社は、接着剤を用いて強度を担保している。 そして、6~8階建の中高層ビルにトライしたのも同社。 このため、約3×15メートルほどの長い壁や床パネルを製造する工場を建ている。
この長尺パネルが、中高層建築を可能にしたと言って良かろう。
8年前に、仲間と同社を訪れた時は、まだCLTパネルという呼称はなかった頃で、同社では 「マッシブホルツ」 と呼んでいた。 15ミリ程度の外壁と床パネルの2階建ての現場を見せてもらったが、取り立てて騒ぐほどのモノではなかった。

むしろ、日本でお馴染みだったのは、長野・原村に本社を持つ自然の住まい社。 28年前に設立されて、2000年からTHOMA社の日本総代理店となっている。 「ピア・ウッド」 が看板。
つまり、CLTでありながら、接着剤と建築金物は 一切使っていないことを売りにしていた。 板と板はダボで緊結していて、接着剤が原因となるシックハウスとは完全に縁を切っている。 また、静電気も起きない住宅。 しかも壁・床とも厚みが17センチで、10年前ぐらいに壁倍率8倍の戸別認定をとっている。
土台を跨ぐように壁を取りつけており、建築金物は使っていないが、1階床と屋根パネルはステンレスの線で結んでおり、耐震面で最も評価出来る住宅の1つ。
ただ、何回も書くことだが、単価が坪100万円以上と高いのが最大の難点。 また 社長だけしかいないという点も気になる‥‥。

この建築現場を見ていただけに、住宅ジャーナル4月号の全身建築金物で覆い尽くされていた写真には、ものすごく違和感を覚えた。
やはり、サッシは壁をくり抜くようにして、垂壁とか腰壁を建築金物で結ぶと言うのは、どう考えても邪道。
つまり、住宅局がイチャモンをつけたくなるような構造体であることが、そもそも問題ではなかろうか? 
ということは、準防火面で無垢の木肌を見せる条件から、3階建しか出来ないと言うことだと、床厚の35センチはやむを得ないにしても、壁厚の25センチは過剰強度であり、いたずらに価格を高くしている気がしてならない。
それよりも、林野庁にとって痛いのは、CLTが地場スギの救世主ではないことが明確になったことかもしれない。

5年前の2011年3月5日付のこの欄で、林野庁の委託研究でツーバイフォー工法で、如何にして地元のスギなどを活用して行くかと言う研究発表を行っている。 その時は、ただ各機関の発表内容を紹介しただけ。
しかし、全体の新設住宅の着工数が落ち込んでいる現在、もっと在来木軸工法とツーバイフォー工法とのドッキングを考えて、価格を抑え、木造と地場スギの活用を考える必要があると、真剣に考えるようになってきた。 
そのヒントを与えてくれたのは、渡辺建築都市設計の所長。
「アメリカの住宅の単価は驚くほど安い。 その原因を詰めてゆくと、木造なら日本でも十分に安く出来ることが分かった。 ともかく、一般建築ではない。 アメリカの住宅から学ばねばならない」 と確信をもって渡辺所長は語る。 それだけの実績をあげているから確信的に発言出来るのだろう。
しかし具体的なことは、まだ何も教えてもらってはいない。
しかし、私が眼を覚まされたたのは、間違いなくアメリカの建築現場。
そして、金物工法にしても、高すぎるというのが私の率直な印象。

木軸の中にツーバイフォーの考えを入れるのか、ツーバイフォーに木軸の考えを入れたらよいのかもわからない。
しかし、CLTに依存しなくても、コストを下げ、林野庁を安心させる方法があるらしいのだが‥‥。


posted by uno2016 at 07:46| Comment(0) | 技術・商品情報 | 更新情報をチェックする
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