2016年03月10日

少子化で、百貨店・スーパーや電車、住宅建築が減少して行く!



竹本遼太著「コンビニ難民」(中公新書 820円+税)

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昨日 (9日) の日経新聞では、セブン&ホールデングが不採算のそごう柏と西武旭川の百貨店を9月末で閉鎖し、イトーヨーカ堂のスーパー店も今年の2月中には20店も閉鎖すると伝えている。

このところ新設住宅の着工が不振で100万戸を割っているが、建設経済研と経済調査会は本年度は96万戸を超えると予想。 一方、住宅金融支援機構は 10万戸少ない86万戸強と予想。 矢野経済は翌2016年度は83万戸になると予想。 野村総研にいたっては、2030年には 53万戸にまで落ちるとの長期予測。  それにしても、昨日の日経の経済欄では大東建託は3月期の決算で利益が100億円ほど上回り初めて1000億円を越すとか、東建コーポの純益が2倍になる予定だとか、まるで住宅不振がないかのような景気の良い話ばかり‥‥。

堺屋太一氏が 「団塊の秋」 に書いたように、2020年の東京オリンピックの年に セ・パに分かれていたプロ野球が、観客動員数の減少から 1リーグ8チームになったたけではなく、サッカーにいたっては、ひところ40チームを誇ったJリーグが24チームに減った、と書いている。
つまり、今までの拡張路線一本槍だったバブル景気時代の夢を捨て、プロ野球から 脱落するチームが出るのは当然のことだと考えねばならなくなっている。
少子化というのは列車が間引かれて10両編成が8両編成になるとか、5分間隔が8分間隔なるとか、あるいは市町村が消えるとかという時代が到来することを意味している。

ところが、そういった減少ブームが続く中にあって、唯一 日本発のコンビニストアだけはこれからも成長を続けると力説しているのが本著。
故渥美俊一氏の 「売上げ100倍を目標にしているのがスーパーストア理論だ」 を聞いたとき、アメリカ発でスーパー業界を指導している理論の精緻さとダイナミックスさに圧倒された。
それまでは NAHB (全米ホームビルダー協会) を中心とする地道な 「生産性向上運動」 以外に、日本の国民を 「低性能・高価格住宅から解放する方法がない」 と信じていただけにショックは大きかった。
たしかに アメリカ郊外のショッピング・センターで、凄まじい勢いで急展開しているスーパーは脅威的な存在。

一方、アメリカの郊外では 「共有地の多いコミュニティづくり運動」 が始まったばかりで、スーパー理論を直接住宅業界へ持込もうと考えているホームビルダーは、ほぼ不在。
「住宅には住宅のやり方がある」 と達観して、地道な生産性向上運動に取組んでいた。
つまり、アメリカの住宅産業界には、売上を100倍に増やすことを考えるスーパーのようなモデル企業は存在していなかった。 あったのは全米ホームビルダー協会参加の4.4万人のホームビルダー達で、年間5~25棟をこなす地場ビルダーが57%を占め、年間51~500棟以上をこなしているホームビルダーは43%。  平均年間建築戸数は、地方の事情を反映して25棟。 
だが、ロスやサンフランシスコの大都市周辺では、1期に30~40棟の分譲団地づくりが増加していたのは事実。
つまり、分譲方式の住宅供給が主力で60%を占めていて、残りの40%は 土地を持ったているが、プランはビルダーないしはプレハブ業者のプランから選ぶ人が20%。 日本で主流を占めている高価な特別注文住宅は、やっと20%を占めていただけ。
もちろんこれは50年前の資料で、最近はプレハブ化がより進み、同時に特別注文住宅が激減してきているはず。

この著書で強調しているのは、アメリカ産の百貨店やスーパーが 完全に下り坂にかったのに対して、日本産のコンビニは5.5万軒を突破して、月に14億人の人を集めるまでになってきているという事実。
たしかに、アメリカの郊外には1万5000㎡以上 (約4500坪) のショッピングセンターがあって、メイン・テナントとしてスーパーが入っている。 道路網と自動車を中心としたアメリカ的な社会を示す風景。
これに対して、日本人が考え出したコンビニは1300㎡ (約400坪) と小さい。 
ところが数がやたらに増えて現在では約5万5000軒にも。 そして、月に約14億人の人間が押寄せている。
そして、かつて1980年台のコンビニは若者の店であった。 6~7割が20歳台で 占めていた。 この時は深夜の若者の騒動やバイクで、近所迷惑な存在。

ところが、2013年に20歳台よりも50歳台が多くなり、現在では40歳台を含めると客層の60%が中高年層が占めるようになってきている。
この背景には、単に食料品や飲料などの物品を買うだけでなく、 いち早く銀行のATMを設置して預金、引出、振込が出来るようになり、宅配便や郵便の受付、公共料金や税金の納入、さらには住民票や印鑑証明の発行と言う行政サービス、コピー印刷、航空券、医薬品、認知症サポート、公衆無線LAN、外国語パンフレットの設置なとの各種のサービスを始めたことが大きい。
郵便局の支店は2.4万と変わらず、ガソリンスタンドは約4万軒へと1/4減。 
その中にあって、かつての迷惑施設から、無くてはならない 「インフラ・ライフライン施設」 に変容したのがコンビニ。

今やコンビニは単なる小売業にはとどまらない。 金融や行政などのサービスを提供する社会インフラになりつつある。
そして、今後ますます高齢化が進めば、高齢者の買物難民化が進み、コンビニがその買物難民に大きく貢献するのではないかと言うのが、本著の最大の特徴。
とくに75歳以上の後期高齢者になると、運転免許をもっているのは3割しかない。 今までは車で買物にゆけた人も、買物難民となる。
そして、後期高齢者の歩行距離は分速60メートルで5分と仮定した。 つまり、半径300メートル以内にコンビニがないと、買物難民になるという勘定。 坂道があったりして、往復600メートルが限界だろう考えたわけ。
それでどれくらいの高齢者が 「コンビニ難民」 になるかを調べたら、高齢者の6割がコンビニ難民になるという結論に‥‥。 
単身高齢者と高齢者夫婦2人だけを数えても800万人以上となり、これから20~30年後を考えると、2000万人近くにもなる。
とくに過疎化が進んでいる山村部と、ニュータウンを抱えた郊外都市の2つの地域が問題になってくる。

筆者は全国の市町村を調べて、コンビニの有無を調べると共に、問題になる地域をピックアップしている。
そして、コンビニ難民を減らすために、筆者は3つの提案を行っている。
しかし、人口密度から考えると、コンビニの数は6万店が限界ではないか、という意見も一部から聞かれる。 もちろん、後継者不足からシャッター街になるのをコンビニが防いでおり、その社会的な存在意義はますます高まるという意見もあるのだが‥‥。
そして、コンビニ業界だけを眺めた3つの提案では心細い。 後期高齢者のことを考えると、質の高い住宅と環境が大切。 さらに、大災害時には、逃げやすい街づくりということも平行して考えねばならない。
それには、コンビニ業界といった狭い範囲で考えるのではなく、地方自治体を巻き込んだ広い場を設けて検討することが必要だと痛感させられた。

いずれにしてもこの著は、分かりやすく、しかも大きな問題を投げかけている。




posted by uno2016 at 13:15| Comment(0) | 書評(その他) | 更新情報をチェックする
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