2016年06月10日

デシカがなくてもダブル断熱で温度と湿度がコントロールが可能?


渡邊和司著「一生健康に暮らせる住まいづくり」(幻冬舎 800円+税)

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先週 紹介した隈 研吾氏の 「なぜぼくが新国立競技場をつくるのか」 を買うために、紀伊国屋書店へ走った。 その時、住宅業界の棚に表記の新しい著作が並んでいたので、面白そうなので ついでに買ってきた。


ご案内のように、私が週刊住宅ジャーナル編集長に着任以来、北米におけるオープンなツーバイフォー工法を発見し、これに惚れこんでしまった。 何しろ日本の数倍も時給の高い職人を使い、日本の2倍以上の性能が優れた建材を使いながら、その住宅の販売価格が日本よりも大幅に安かった。 つまり、建築現場の生産性が、日本の数倍も上回っていた。
当時、すでに10数社が北米のツーバイフォー工法を真似て、日本で特許をとっていた。 不肖日本ホームビルダー協会も個別認定を取っていた。 北米でオープンな工法を、如何にも自社の開発工法のようにPRしている根性が許せなかったし、やたらとカネを払ってプランを多く得ないと、使いものにはならなかった。
幸い、住宅局長の理解が得られ、住宅金融公庫の若手の技術者による標準仕様書造りが着実に進んでいた。 これと並行して、ホームビルダー協会の仲間の努力によって、ツーバイフォー工法をオープン工法として導入させることに成功。

ともかくアメリカで、ダイヤフラム理論が公認されていたので公庫の技術者は抜かりなく仕様書を作成して、床をプラットフォームで構成して耐震性が抜群。
それだけではない。 12.5ミリ厚の石膏ボードを押入れを含めた全ての天井面と内壁面に採用した。 そして、ドライウォール工法での仕上げ。 その生産性の高さも、防火性能の高さも抜群。
タウンハウスの界壁には、石膏ボードを2枚を公庫の標準仕様書で使っていたし、アメリカの中高層ビルには30ミリとか40ミリの厚い石膏ボードが採用されていた。
北米では、ツーバイフォーによる木造住宅の寿命は、コンクリート造と同様に100年間と言われていた。 「少なくとも、3世代は持つのが木造住宅」 という意識が、当時アメリカの主流を占めていた分譲住宅では常識。


しかしオープン化以降、ツーバイフォー工法が順風満帆で成長してきた訳ではない。
この工法を最初に本格採用したのは寒冷地の北海道。 1年も経たないうちに壁の中に充填させていた断熱材が、結露で氷って氷柱になってしまった。 早速、アメリカの歴史を調べてもらったら、第2次世界大戦前後から北米でも断熱材が使われ始め、冬期に壁内に漏れた空気によって結露を起していたことを発見。 北米ではこの結露を防ぐために、冬期室内に空気が漏れないように石膏ボードの下にべバーバリアを入れていることが判明した。
ところが、べバーバリアを入れると、東京以西では夏場に結露が生じることが計算上明らかになってきた。 この解決策として内壁通気層の設置などが検討されたが、北海道が開発した外壁の構造用合板の外側‥‥つまり、外壁仕上材の内側に通気層を設けることで、壁内結露問題が解決された。


その次に問題になってきたのは、アルミサッシの結露。 これは、アルミではなく木やプラスチックの枠材を採用して、ガラスをダブルではなく最近ではトリプルに格上げして、完全に開口部の結露を防止している。
つまり、北海道をはじめとした先進的なビルダーにおいては、サッシだけではなく、壁内結露問題はなんとか卒業出来たと考えて良いようだ。
そして、先の阪神淡路大震災でもほとんど倒壊などの被害がなかったのがツーバイフォー住宅。
豪雪地の中越地震では、ツーバイフォー住宅の存在が限られていたが、倒壊はゼロ。 そして、外壁に構造用合板を採用したスーパーウォールが、震度7の川口町では倒壊していなかった。
ごく最近の熊本地震。 まだ詳報な情報は入手していないが、ツーバイフォー住宅はいずれも健全な様子。 詳細を入手次第、報告したい。


そして、阪神淡路や中越地震で、息の根が止められたと思った木軸工法が、金物工法で復活したことを喜びたい。 しかし、金物工法で特認を得ている大手住宅メーカーの動きを見たり、各社の動向を見ていると 必ずしも諸手を挙げて喜ぶわけにはゆかない。
やたらに集成材の柱や梁を多用していて、ツーバイフォーに比べると資材が30%も多く使っており、今後においてもコストダウンの見込みは非常に少ないように見える。
私が北米のツーバイフォー工法に魅せられたのは、性能を遥かに上回るコスト安。 別の言葉で言えば現場の生産性の高さ。
それに、金物工法が追付いておらず、このままでは北米との差が開いてゆくばかり‥‥。
たしかにアメリカは2007年の世界金融危機で、サブプライム住宅ローンに飛び火して、バプルが崩壊した。 しかし、傷を負ったのは金融業者で、多くの地場ホームビルダーは投機を回避していて、ほとんどが無傷。


これに対して、技術的には問題はあるが、三井ホームやセキスイハイムを抜いて、住宅業界2位の座を i-smart などのツーバイフォーパネル工法の急躍進で支えている一条工務店。
同社が急伸出来たのは、フィリピンに存在する格安の生産工場と、平均7~8ワットも搭載している太陽光発電パネルが、たった1%の金利費で搭載できるという戦略のうまさにある。
たしかに、ツーバイフォー工法をパネル化したという先見性も買えるが、やはり何と言っても、Q値は0.82W/㎡・k、 C値は0.59cm/㎡という性能値が、坪70万円以下で買える点こそがポイント。
こうした性能と価格を消費者に提示した業者が、いままでいただろうか?
私が第一線で働いている時は、「チャンス到来」 と頑張ったはず。 しかし第一線を退いた現在では仲間の動きを観察するだけ。 「チャンス到来」 と叫ぶモサは、残念ながら見当らない。


次に問題になってきたのは、日本の冬期の異常乾燥と、夏期の高温多湿。
筆者は、「ハワイは大変涼しかった」 と言っているが、私が数度はワイキキを訪ねているがいずれも1~3月の冬期。 いずれの時も、ハワイの蒸暑さに閉口。
たしかに、相対湿度でホノルルを見ると62~82%。 一方、東京の相対湿度は60~76%。 たいした差が無いように見える。 しかし、年間ホノルルの温度は28.8℃に対して東京は16.6℃。 絶対湿度で見るとホノルルは18グラム強に対して、東京は8グラム弱。 なんと10グラム以上もホノルルの方が絶対湿度が2倍以上と高い。
とくに1~3月の3ヶ月で見ると、東京は22.6グラムに対してホノルルは3.5倍も高い79グラムもある。 冬期しかホノルルを訪ねたことのない私が、ホノルルの冬期の蒸暑さに閉口した理由がお分かり頂けることと思う。
アメリカの西海岸やヨーロッパは、冬期はジメジメしているけれども、夏期はカラリと晴れていて、心の底から楽しくなってくる。 旅に出かけるなら夏期のアメリカの西海岸とヨーロッパ。 別の言葉で言えば、アメリカの東海岸へは、私は日本を感じるので行きたくない。


したがって、30年以上も前から、「日本の冬期の異常乾燥と夏期の高温多湿」 を大問題視。
当然のことながら、著者の言うように私もダブル断熱と壁内通気を何回となく試みてきた。 しかし、北海道のように寒冷地の場合には、充填断熱+燃えないロックウールによる外断熱でのダブル断熱は不可避。 だが、東京以西ではダブル断熱をやるよりは、206材の14センチ厚の中に重量断熱材を吹込むシングル断熱の方が、はるかにコスト安。
今では、Q値が0.9W/㎡k以上が出せ、C値は0.5c㎡/㎡を切ることは容易。
つまり、一条工務店が言うところのQ値0.82W/㎡・k、C値0.59c㎡/㎡に限りなく近づけられる。
著者は、ご自慢のダブル断熱のQ値がいくらなのか、最後まで探したが、記載されていない。
そして、C値はc㎡/㎡で表現するところを、わざと約10センチ角の穴と表現している。 もし40坪 (132㎡) の住宅に換算すると、0.76c㎡/㎡となる。 一条工務店の0.59c㎡/㎡よりはるかに下。
壁内通気をやっているので、この程度の数値でおさまっているのは上出来。 それにしては、あまりにも自慢がすぎて、読んでいて気持ちか悪くなってくる。 少なくとも、一条工務店を上回ってから、自慢話を始めてほしい。
といっても、「一生病死をしない住宅はどうあるべきか」 と書かれている内容には、私も100%は賛同。 文句をつけるところはなし。 ただし、この程度のことでタラタラ自慢話を並べられることは、絶対に許せないと思う。


ということは、冬期の加湿と夏期の除湿は、私に課せられた長年の課題。
最初に、この難問に取組んでくれたのがダイキン。 歴代の東京ダイキンの技術部長は、実に真剣に取上げてくれた。 最初に開発されたのは、除湿には一台のエアコンを使い、冬期の加湿は透湿膜によるものだった。 これが10年ぐらいは続いたと思う。
施主からも好評で、「おかげで冬期も薄い掛布団だけで済む。 ベランダで布団を干さなくて済むようになったことが大変に有難い」 との賛意をいただいた。
また、ほとんどの施主は当初は網戸を欲しがった。 ところが、一夏とか二夏過ぎて伺うと、ほとんどの家では網戸を外して生活していた。
「いゃあ。 最初は春とか秋は窓を開けて、外気を取入れていたのです。 しかし、窓を開けると
車や隣近所がうるさいし、砂埃も入ってきて掃除が大変になる。 そこで、いつの間にか窓を開けない生活に変わった。 窓を開けなくても空気は綺麗だし、除加湿もきちんとやってくれているので問題はない。 結局、網戸が不必要になったのです‥‥」 と。
そのうちに、R-2000住宅が普及してきて、Q値は1.3W/㎡・k以下に、C値は0.89c㎡/㎡になってきた。 このQ値には悩まされたが、C値は0.5c㎡/㎡は直施工の地場ビルダーには簡単に出せる数値。 ところがツーバイフォーの大手である、三井、三菱、東急など施工を外部委託している各社は、軒並みこの項目で失格。 R-2000住宅から姿を消してしまった。


大手メーカーは、プレハブメーカーにしたところで、高気密にはからきしダメだということがこのことで判明した。 そして、国交省が音頭をとって、政府のあらゆる記載から 「気密性能‥‥つまりC値を除外」 するという暴挙に及んだ。
つまり、「暖かい住宅」 というのは、隙間のない住宅のこと。 この肝心のC値を除外したことで、日本の住宅は国際水準から逸脱した寒い住宅‥‥やたらに燃費のかかる住宅へと脱落してしまった。
「高断熱」 は謳うけど、「高気密」 には一切触れないという、まったく不可解な現象が、国交省と大手住宅メーカーの手によって決行された。
このため、「ゼロエネルギー住宅」 といっても、日本では太陽光発電をやたらに搭載した住宅を指すようになってきている。
勇気ある人が出てきて、国交省のバカげた理論が一掃されることを願ってやまない。


さて、透湿膜による加湿は水道水の中に溶け込んだ塩素などによって、水が流放しになる故障がよく発生した。 このため、ダイキンは透湿膜を避け、業務用のデシカを家庭用に変更する研究を開始した。 水道水を使うのではなく、空気中の水分を使う方式。 そして、多くの消費者が居るにもかかわらず、ダイキンは透明湿度膜の生産を中止!
デシカが、透湿膜と同じ価格で生産され、流通するものと考えて私は全面的にダイキンに協力。
そして、かつて工事の発注を一任していたオリエンタル冷熱が、各部屋ごとに温度や湿度を調整出来る分配器を開発してくれた。 これは従来のダイキンの分配器と異なり、必要な給排気をミリ単位で調整出来ると共に、温湿度を居住者の好みに合わせて調整出来るすぐれもの。
そして、オリエンタル社がダクト配置工事を容易にするために、計30万円/戸程度高くなったが、北側には平行弦トラス床を採用した。 これでダクト工事が飛躍的に容易になった。
また、天井面から直下に吹下ろす方式では風を感じるのを嫌い、廊下の天井を下げて、水平に吹出すように工夫して、風を感じない家造りを目指した。


つまり、Q値やC値の性能を良くすると、40坪程度の住宅では空調機は3.0KW程度のものが1台あれば良く、7~8台は不要になる。 つまり、1台のデシカを兼ねた空調機と90%以上の熱回収機があれば、風を感じない快適な生活が得られる。
ところが、業務用のデシカを住宅用に替えたら、なんと定価が100万円以上に。
かつての透湿膜方式だと、平行弦トラスを採用すれば、ダクト工事込みで100数十万円で仕上がっていたものが、軽く200万円を突破してしまう。
これだと、ダイキンとしては、1台の高いデシカを売るより、7~8台のエアコンを売った方が、会社としても1営業マンとしても良いことになる。 かつて絶対視されていた除加湿機能は、等閑視されるようになってきている。 しかし、価格問題を別にすれば、入居者の話を聞けば、デシカの除加湿の機能には最高の性能を感じている。 高くても使いたいという消費者も存在する。

もし、著者の言うように、壁内排気方式で除加湿機能が得られるのであれば、私も千葉のトーワホームシステムを選びたい。
しかし何度読返しても、心の底から納得出来ないでいる。 一度、同社のモデルハウスを訪ねてみる必要があるようだ。




posted by uno2016 at 14:36| Comment(0) | 書評(建築・住宅) | 更新情報をチェックする
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