2016年07月20日

熊本地震に対する4氏の力作が掲載されている住宅ジャーナル8月号



「月刊 住宅ジャーナル」8月号 (エルエルアイ出版 1000円+税)

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熊本地震に対して、私は熊本の現地を訪ねたことがない。
新聞やテレビで概略を知らされただけ。 
月刊「住宅ジャーナル誌」の6、7月号や、姉妹誌「プレカットユーザー」誌の第16号で、M′s構造設計の佐藤代表による長文の現地取材報告書を読んでいたので、ある程度の知識はあるはずだと考えていた。 しかし、今回4つの熊本現地調査報告書は いずれも迫力満点で、既存の知識を破壊してくれる内容ばかり。 ´
まず①は、6月16日のツーバィフォー40周年記念講演における五十田博京大教授の「ツーバイフォー工法の40年と今後の可能性」。 ②は、6月20日にM′s社など3社が主催の東京新宿セミナーが開催され、「熊本地震から学ぶ‥‥貴方の住宅は大丈夫ですか?」 という上述の 佐藤実代表の話。 
③は、インスペクター協会が6月15日に開催した北工房の栃木渡社長の 「建築士が見た正しい壊れ方」。 さらには、④はジャパン ホームシールドが5月9日から15日の6日間にわたり現地へ派遣した4人の調査マンの調査報告に基ずき、6月22日に開催した小尾英彰地盤地質研究所長の「地盤のプロが見た被害の実態」で、いずれもに感銘を与える。

このうち、詳細な報告書を入手できたのは①と②だけ。 ③の栃木氏の話には詳細な報告書がなく、④の地盤の話は、いくら資料があっても液状化、擁壁や崖地の崩壊、断層変位による被害などは私の専門外。 詳しく解説など出来るわけがない。
したがって、資料が揃っている ①の五十田京大教授と、②のM′s構造設計の 佐藤代表の話を中心にして、私の疑問点と関心事を主に記してゆきたい。
ご案内のように、私は北米で普遍化しているツーバイフォー工法を、オープンな形で日本へ導入した張本人。 とは言っても、私はツーバイフォー工法こそが 絶対的なものだと思っていたわけではない。 
私は木造住宅が大好き派。 
日本の在来木軸工法の改善の方向を探っているうちに、北米のツーバイフォーにブチ当ったと言うわけ。 そして調べてみると 耐震性能や耐火性能が日本の在来木軸に比べてはるかに良い。
そして、アメリカでの価格を調べてみたら、日本より50%も余分に資材を使い、40年前で日本の大工さんの10倍近い時給を払いながら、日本よりはるかに住宅価格が安いではないか!
その秘密は、現場の生産性の高さにあった。
これは一大事。
建築現場の生産性を上げるために、何としてでもツーバイフォー工法をオープンな形で導入し、日本の木質構造の建築現場を変えてゆくしかない。 こうした決意でツーバイフォーに取組んだ。

そしてすぐ後に、阪神淡路大震災と中越地震が日本を襲った。
耐震性のもろい在来木軸工法は、軒並み大きな被害を被った。 正直なところ、私は木軸工法は命を絶たれたと考えたほど。 ほとんどの通し柱が折れて、惨状をさらけ出し、多くの消費者の尊い命を奪ったしまった。 これは絶対に許せない建築業者と建設省の横暴事件、と私は捉えた。
ところが、阪神淡路と中越地震を契機に、金物工法が開発されて 地震でも折れない通し柱が誕生してきた。 このため、どれほど私がホッとしたことか‥‥。
しかし、残念ながら金物工法はどこまでも木軸工法を大前提に考えている。 3尺毎に柱を入れ、
3尺間隔に集成材の根太を入れている。 このため大変に頑丈な工法になった。 ちょっとやそっとの地震にはビクともしない。 しかし 材積はツーバイフォーに比べて30%も多くなり、割高なものになってしまった。
その時、昨年死亡した北海道の高倉氏から緊急の電話が入った。
「北海道で、ツーバイフォーのパネル化が進んでいる。 大変喜ぶべきことだが、浮かれてばかりいる訳にはゆかない。 運送の関係でパネルの大きさは 2間半かせいぜい 3間が限度。 このため、外壁はアメリカのように1本物で強度を確保することが出来ていない。 どうしたらよいだろうか‥‥」という相談ごと。
私は、北海道の仲間が外壁を206材でパネル化して、2間半か3間ごとに606の通し柱を建てている事例を目撃していた。 もちろん 内部は404の通し柱。 そこで勢い込んで 「606の通し柱を建て、合板を外側から455ミリ離れたところから打ち出す方式を明文化する。 すると合板は通し柱を挟んで両面のパネルに現場打込ちになる。 外壁は一体化して、最高の収まりが得られる。 もちろん2階根太は I ジョイストを使えば安く上がる」 と言う具体案を提示した。 これこそが ツーバイフォーと在来木軸との最高のドッキング例だと思った。

しかし、高倉氏は北海道で606の通し柱を使った具体例は知っていたが、「これはツーバイフォーと在来木軸との悪しきドッキング例になるかもしれない」 と懸念したらしく、折角の具体例が 陽の目を見ず、闇の中に消えてしまった。 私は今でも このドッキングが成功しておれば、ツーバイフォーと在来木軸が正しく一体化していたはずだと悔やんでいる。
と同時に、私は京大の五十田教授の論文を読んで、非常な違和感を感じたことも事実。 それは、日本の在来木軸の基準が、経験と勘によって法制化されており、ツーバイフォーにも同様な欠陥が見られるという指摘。
これは、おかしい。 アメリカの実態を知らなさすぎる。
アメリカでは、大工さんの在来のやり方を変え、生産性をあげるためにNAHB (National Assocition of Home Builders、全米ホームビルダー協会) が中心になって、全国の学者を 総動員して 新しいマニュアルを作成した。 そのやり方は、「タマップ方式」 と言って、日本ホームズ社の松田専務が、その貴重な映画をわざわざ私に見せてくれた。
タマップ方式というのは、職人さんの伝統的なやり方をどこまでも尊重する方式。
とりあえず、大工さんに 今までのやり方で作業をやってもらう。
その動作や段取りを、選ばれた学者や役人、NAHBの現場監督などに黙って見てもらう。
そして、一通り作業が終わった時点で、専門家から段取りや 作業の改善案が提出される。 それは今までの作業内容を根本的に変更する案である方が、より望ましい。 なぜなら、作業内容がより効率化すれば、職人の時給が上がるシステムになっていたから‥‥。

このように、アメリカでは 会員社約8万人と言われる、①NAHB (全米ホームビルダー協会) が中心になって現場の生産性向上運動の中心になったこと。 そして ②最初の段階から学者などの専門家の意見を積極的にとりいれていたこと。 ③この機能を確実なものにするため、職人の参加を求め、生産性向上に合わせて時給の改善を図ったこと。
そして、今でもより正しい方法が考案されると、アッという間に全国に広がる。 情報力はすごく発展している。
つまり、日本で言うところの全建総連が音頭をとり、学者や役人などを加え、生産性の向上に合わせて賃金の向上を図ってやおれば、日本でも絶対に成功したはず。 それをやらなかったために、日本の生産性向上運動は盛り上がらなかったし、役人の文章も経験則を重視したものにならざるを得なかったのだと思う。
こうした経緯を知っていただけに、アメリカのツーバイフォー工法を日本化するために金融公庫の原案づくりには細心の注意を払った。 とくに水平剛力を重視する 新しい考え方には、公庫のプロのサジェスチョンもあって配慮した。
それなのに、こうした経緯を知らない京大のツーバイフォーのプロから、揚げ足取り的な批判が出てきたことには、驚きであるとともに当惑した。

私は、大型木構造に対しては、在来の柱、梁方式を残す金物方式には大賛成。
しかし、3階建までの木質構造に関しては、柱、梁方式にこだわる必要は一切認めるわけにはゆかないと考えている。
国産材で204とか206材のパネルを作る方が、はるかに効率的で 価格も安くなる。 同時に3階建まではツーバイフォーの床剛性に学び、大きな集成材の梁にこだわらず、I ジョイストを455ミリピッチに入れた方が耐震強度が得られ、価格的にも20%は安くすることが出来る。 たしかに、606等の通し柱の基礎に取りつける部分と、2階の床が来る部分は、剛な金物が必要になる。
しかしそれ以外の部分では、金物工法にこだわる必要性はないはず。 もっと安くて合理的なツーバイフォー工法に学ぶべき。

こうした私の意見は少数派。 
しかし、ツウバィフォー工法が 全木質構造の1/4を占めるようになったと喜んでいる場合ではない。 全木質構造の普及のために、考えを改めるべきだと思うが,如何であろうか‥‥。




posted by uno2016 at 13:10| Comment(0) | 技術・商品情報 | 更新情報をチェックする
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