2016年09月15日

三井ホームが8月に打った全面広告から学ぶべきこと。



ご存知のように、約1ヶ月前の 8月19日付の日経新聞の10面に、三井ホームが 「震度7に60回
も耐えた家」 という全面広告を掲載した。
日経新聞以外にも、朝日新聞や読売新聞などにも、全面広告を掲載していたのだろうと思う。 ただし私は、日経新聞しかとっていないので、他紙に どのような広告を打っていたかは、残念ながら知らないし、あえて知ろうとは考えない。
どこまでも、日経新聞に掲載された全面広告を大前提に話を進めてゆきたい。

三井ホームは、今年の4月につくば市の建築センターで、ツーバイフォー工法で6階建の2時間耐火造という住宅を建て、皆を「アッ」と驚かせた。
それまでは、大型の老人ホームなどに1時間耐火が求められているのを見て、私はビックリしていたのだが、6階建の2時間耐火には、想像以上の性能が‥‥。
内装下地には補強タテ枠のほかに、21ミリと厚い強化石膏ボードが3枚も求められている。
それぐらいで驚いてはいけない。 なんと2階から6階までの床の構造体が全部異なっているだけではなく、床にも21ミリ厚の強化石膏ボードが、2枚も求められていた。 この仕様を見て ビックリしない方がおかしい。
そして、木造で6階建を考えることそのものが 間違っていることに気付かされた。
RC造で半地下と1階を建て、木造部分は2~3階部分だけにしてゆかないと、コスト的にツーバイフォーの木構造は 絶対に採算が取れない。
この推定の可否は別にして、木質構造で6階建を建てるメリットが1つもない。
もっと謙虚にRC造の良さを認識し、「防火性とか耐震性はRC造に任せ、ドイツのように 外断熱で断熱性能を稼ぐしかない」 と私は痛感した。

私の考えを押売しょうなどとは、毛ほども考えていない。
ただ、4月の三井ホームには正直言ってがっかりさせられたが、8月の三井ホームの提案には 心底から感動させられた。
それは、三井ホームが震度7という過酷な条件下で、「延べ60回と言う耐震実験を行い、見事に震度7に耐えられる住宅を得た」 という事実。
熊本地震で最大の関心事は、最初の震度7では倒れなかった在来木造住宅が、2度目の震度7には耐えられず、倒壊した例が余りにも多かったこと。
このことは、単に在来木造の出来ごとではなく、ツーバイフォー工法住宅にも 言えるのではないかという不安に悩まされた。 そのための資料集めに奔走したが、協会本部もきちんとした資料を持っていなかった。

話は、40年以上も遡る。
ご存知のように、日本ホームズの前専務が中心になって、当時の新大久保駅前にあった 建妍の空地で、アメリカから3人の大工さんを呼んできて、「ツーバイフォー工法の建て方実演」 を行う計画を立てた。 NHKが朝のテレビで 事前に取上げたということもあって、この建て方実演は大変な人気を集めた。
建てられた実大住宅の耐震試験を行ったのは、明大の杉山研。 すべて日本ホームズの前専務が用意し、ホームビルダー研が実験結果発表の場を用意した。
その内容は驚くほどのもので、日本の在来木軸の性能は はるかに超越しており、RC造に迫る耐震性であった。
欧米でオープンとなっているツーバイフォー工法を、地震の多い 日本で活かさないのはおかしいということで、数社が杉山研で実大試験を行った。
その実態を、杉山先生から聞かされていたので、他社がやったことのない実大試験を ホームビルダー協会としてお願いすることにした。 それは群馬のヨシダが、大きなオープンスペースの中にプールまで用意した 「人魚の里」。
全棟で50戸弱だったが、新しい開発手段が 人気を呼んで、あっという間に完売。 この人魚の里で売出中のツーバイフォー住宅を、ヨシダではまぎれもない実大実験棟として提供してくれた。

当時の実大実験というのは、建てられた住宅の2階床部分を引張って、外壁の傾しむ具合を見て強度を計測するというもの。 したがって、分譲地の中に、約2メートル角、高さか約3メートル程度の鉄筋の塊のコンクリートが埋め込められて、これを軸にして建造物の2階床部分をヨコに引張って外壁の傾斜度を計測する。
当然、人魚の里の建物も、ヨコに引張られて倒れるものと誰もが考えていた。
ただし、この住宅は実際の分譲用で、全体に小振り。 しかも内壁や天井には石膏ボードが張られていて、やたらに強度があって簡単には倒れそうにない。
このため、杉山研の若い研究者は、やたらと圧力をかけて建物を倒壊させようとした。 そしたら想定外の事件が発生した。
なんと、軸になるように地下に埋設していた コンクリートが浮上がり、建物を倒壊することなくして、実験を中止する破目になった。

この報告を聞いて、ビックリしたのは杉山先生。 まさか、軸になる鉄筋コンクリートの固まりが抜けて、実験が中止せざを得ないとは考えていなかった。
「いゃー。 今までツーバイフォーの実大実験は、何度となくやってきた。 しかし、内部に石膏ボードを張った住宅が、こんなに強いとは想定外の出来ごと。 実質的に8倍の壁倍率を挙げたいところだが、まさか実験施設が破損したので実験が不可能になったとも書けないので、4~5倍の壁倍率で我慢をしていただくしかないが‥‥」 と、大変なあわてぶり。
そして、実験に供された住宅はなに1つ被害を受けていないので、そのまま販売することが容認された。 これは、画期的なことだと私は叫んだ。
これを聞いたある先生は、「石膏ボードを止めているクギは、リング付きではなく、通常のGNF40だろう。 相手が石膏ボードだから初期強度が出ただけではないかな‥‥。 長年のうちにGNF40の効力は落ちるのではなかろうか‥‥。 合板を止めているCN50も、そのうち強度が落ちてくる可能性も否定は出来ないし‥‥」 という意見が出されてきた。
つまり、「各種ボードやクギの長年の耐久テストが絶対に必要」 という口振り。
この意見には、私もとまどった。
正直なところ、「耐久テストをやり、その結果を添えればよいのだろう」 と分かったが、なにしろ貧乏な協会。 そんな耐久テストをやれる予算がどこにもない。
このため、ツーバイフォーを構成する各種ボード類や、クギの強度については、長年にわたり私の課題として残されてきた。

そして私が、中越地震で見た在来木軸では、外部に張った構造用合板が、通し柱の折れるのを支えていて、大変強力な味方になっていたことが分った。
しかし、震度7の川口町では、内壁には14センチの半分の7センチのスジカイが入れられていて、このスジカイはすべて強力な圧縮力を受けて面外挫屈を起し、あらゆる石膏ボードを綺麗に吹き飛ばしていた。 どの家も、内装壁がないのだ。
これを見て、私はスジカイ工法そのものに疑問を抱き、構造用合板と言う面材こそ、地震から木造住宅を守るポィントだと知った。 しかし、私ごとき者がいくら知ったところで意味がない。
杉山先生にオーソライズしていただかないと、世に知られてルール化されることはない。
私は、病気見舞いを兼ねて、杉山先生に会える日を待ち望んだ。
しかし、2005年の春に、杉山先生は帰らぬ人となられた。
先生の死が、どれほど木質構造体にとって痛手であったかについて、いまさら 書くまでもなかろう。 以来、私は後ろ盾を失い、無用の長物になってしまった。

こうした背景があったからこそ、8月19日の三井ホームの全面広告は意義を持っていた。
ともかく、震度7の地震を60回も続けて行った。
加振最大加速度は5115ガルだったという。 熊本地震は1580ガル、東日本大震災では2933ガル。
阪神・淡路では891ガルにすぎなかった。
震度7の烈震強度を、60回も住宅に与え続けて、何一つ被害を受けなかったということは、私が心配していた 「各種ボード類やクギ穴が劣化して、効力が落ちることをそれほど心配しなくてもよい」 ということを意味していてくれることではなかろうか。

いまこそ、晴れた気持ちで、「ツーバイフォー工法の耐震性に、安心していただきたい」 と、声を大にして叫ぶべきではなかろうか。




posted by uno2016 at 11:49| Comment(0) | 技術・商品情報 | 更新情報をチェックする
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