2016年01月05日

夢を叶えてくれそうにない駆け出しのパッシブ屋の「家づくり」



高垣吾朗著「夢を叶える家づくり‥‥1時間で分る省エネ住宅!」(青春出版 1300円+税)

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恒例の通り 国分寺駅の紀伊国屋へ行って、正月に読むに値する本を 探した。 残念ながら、「これは‥‥」 という本はなかった。
その中で、“はじめに” のページを開いていて 眼に付いたのが、5才の子供が 「おばあちゃんの静岡の家へは遊びにゆきたくない。 だって寒いんだもん! 」 とグチを言って母親を困らせている男の子の話。 これは何も、おばあちゃんの家に限ったことではなく、「日本全国の95%の家が、隙間風がビュンビュンが入ってきて、なまじ エアコンを付けると空気は暖められて上昇するので家の中全体が体感的に寒くなってしまう。 これこそ 欠陥住宅、不健康住宅の見本」 との著者の文句。 この文句に賛同して、この本を買ってしまった。 少しはパッシブハウスのデザイン上でも役に立つだろうと思って‥‥。 
「隙間風がビュンビュンという住宅が 95%を占めるというのは、如何に何でも 多すぎる。 私の知っている北海道や東北、関東の仲間が建てている 暖かい住宅は、アパートを含めた戸建住宅では20%に達している。 95%というのはこの本を買わせるための 宣伝文句だろう‥‥」 と考えて妥協していた。 たしかに、「RC造のマンション住宅の方が、隙間風が入ってこないので木造住宅よりは暖かい」 という認識が一般的に流布していることは知っていた。
ところが読み始めて見ると、この著者は住宅業界の実態に少し暗すぎる。 本気で低層戸建住宅の95%は 隙間風が入る欠陥住宅だと考えているらしい」 と知って、唖然とした。 これでは、日本の住宅を語る資格はない。

そこで、慌てて著者の略歴と著者が勤めているコラボハウスの会社概略を調べた。
著者は 1981年生まれだから35才以下と若い。 島根生まれで琉球大理学部卒後 北大地球環境学部を修了後に大手電気メーカーに就職。 自分の学歴を活かした家づくりに参画したいと工務店巡りをしている中で、コラボハウス1級建築事務所の社長に出会って入社。
しかし、このコラボハウスは、ネット上で挨拶しているのは現場監督兼会長の田窪氏。 代表者の志賀氏も 現場監督兼社長であるらしい。 設立は8年前の2008年6月。 資本金は5000万円で、年間売上高などの記載がないので不明。 社員は地元・愛媛県内の高卒を中心にインテリアコーデネィターや確認申請者・土地斡旋者を含めて約20人、このほかに 現場監督・大工・経理を含めて10人強。 全社員で30人強の規模らしい。 その中では著者の学歴が際立っている。
個別展示場は、県内の松山・今治市を中心に4ヶ所。 香川にも設けているらしい。
私も ホームビルダー業をやっていた時には、一部の営業マンの無能さと知識慾のなさに呆れてしまった。 担当営業マンというのは、施主のご機嫌伺いばかり。 時には お客を突き離す必要があるのに、一方的に顧客を失いたくないためにムリな注文も引受ける。
このため、ハーティホームを始める時は 営業マンを全廃して、設計士に営業の仕事をやらせた。
いわく、設計事務所の所長の仕事は100%営業。「皆さんも、設計事務所の所長になったつもりで頑張って欲しい」 と。
営業マン制度を全廃したからと言って、著者の言うように 営業マン分の経費が少なくなるということは絶対にあり得ない。 それよりも、消費者のナマの声が聞けることが何よりのメリット。 つまり、最初から顧客の要望に近いプランが提出でき、そのことにより 施主の満足度か高まり、会社としては余分な経費が減少する。

営業マン制度の廃止は、上記のメリットをどこまでも中心に考えるべき。
ところが、コラボハウスがやっていることや 考えていることの実体は、ビルダー業に過ぎない。
それなのに、1級建築士事務所を掲げて、「デザィナーズ住宅」 をやたらに振り回している。 たしかに、地方では1級建築士事務所を看板にした方が、効果が高いのだろう。
東京では、女性を含めて大卒の建築士は腐るほど居て、有難味はそれほどない。 建築学科の先生が言っていたように、「1級建築士と言うのは 足の裏についたコメツブ。 取らないと気持ち悪いが、取ったからといって 食べられるわけではない‥‥」 と。 つまり、有難味が東京と地方ではまるきり異なる。 そして、今はどうかは知らないが、私の時は募集をすると何倍かの設計士が集まってきた。 といって、学校対策はおろそかに考えたことは一度もない。
それよりも、いかに消費者の考えを反映したプランを作くれるか、また そのプランを忠実に現場で実行し、しかも 予定のコスト内で上げられるかが勝負。 したがって、私の時代は1級建築士よりも、優れたビルダーであることが消費者には魅力的であった。 私はプランをやりながらも、より優れたビルダーであることを印象付けたいと願っていた。
しかし、愛媛県のコラボハウスを見ていると、最近の消費者の価値観は 一変しているらしい。 1級建築士事務所により有難味を感じているようである。 そのことを言外に知らされて、私は唖然とさせられてしまった。

それと、コラボハウスは、3.5寸角の在来木造を中心に商売をしているらしい。
正直なところ、私は在来の3.5寸角の木軸は、2つの面で全く信頼していない。
1つは、耐震性の面。
何度も書くので、多くの読者は食傷気味だと推測する。 しかし、神戸と中越地震の現地を見て、私は3.5寸のプレカット材にはコリゴリ。 あれほど 耐震性で信用出来ない工法はないと感じている。 せめて、金物工法でないと、肝心の通し柱が途中で“ポキン”と折れて、1階が2階に押し潰されてしまう。
3年前に発表された予測によると、南海トラフで マグネチュード8以上の地震が、30年以内だと60~70%、50年以内だと90%の確率で必ず起ると言われている。
ともかく、愛媛県でもそれなりの震度と津波が襲ってくるはず。 これに対して、筆者は一言も発言していない。 私は、筆者は無責任だと感じるが、私のセンスが狂っているのかもしれない。
もう1つは、断熱性能。
3.5寸の柱の中に充填断熱をした場合は、著者が言うほどの性能値は絶対に得られないはず。 当然のことながら、+外断熱を考慮しなければらない。 具体的に どのような外断熱を施工し、コストはいくらかかったか、あるいは どのような性能が得られたかについての記述がない。 自分の経験値からいって、これこそがコスト面からから考えた場合には一番ベターな提案だ、という記述が一切見られない。
評論家的に、各種の断熱材の性能を並べているだけでは、実践では役に立たない。

それと、この著では珍しく“気密性”の重要さを指摘してくれている。 国交省や学界のお偉さんは、プレパブ大手の 不当な難癖に屈して、政府の あらゆる基準から“気密性”を外してしまった。 つまり、先進国で唯一“気密性能”に対して基準を持っていない国に成り下がっしまった。 そのことに対しても、筆者が触れていないのが物足りない。
それどころか、夢を叶える家づくりのためには、最低何c㎡/㎡の気密性能が必要であるか との具体的な提案が皆無。
つまり、筆者は社内においても、浮かれた存在なのだろう。 あまり何c㎡/㎡と書くと、社内から突き上げを食らう。 そのため、評論家的な発言に終始しているとしか 考えられない。 そんな評論家は、今さら必要ない。

それと、この著の最大の欠点は、除加湿に対して何も触れていない点。
この著書は、一貫して 「パッシブハウス・デザイン」 を論じている。
ご案内のように、パッシブハウスに関して、最初に問題を提起したのはドイツのダルムシュタット市に本社を置く パッシブハウス研究所。 私は約7年前に 仲間と同研究所を訪ね、そもそもの発想の根幹からいろいろ聞いてきた。
そしてその後も、各種の機関がヴォルフガング・ファイスト博士をはじめとして 10人近くの著名人を日本へ招いてくれ、私も著名人の話を聞く機会を得た。 しかし、いくら話を聞いても納得出来ない点が残った。
それが3年ぐらい前に、ヨーロッパの気象学を勉強している中で、ハッと気付いた。
それは、「ヨーロッパの雨期は冬で、夏期は乾燥期だ」 というあまりにも単純明快なこと。
言われて見れば、冬期にヨーロッパを訪問すると、いつも雨の日か曇りの日ばかり。 私は数回冬期のヨーロッパを訪ねているが、一度もカラリと晴れた日に遭遇しなかった。 そして、イタリアにしても、夏はカラカラに土が乾いているのに、冬期は麦の青芽がどこまでも続いて 眼を楽しませてくれた。
また、フランスにしてもドイツにしても、夏期はカラカラに乾燥している。
とくにドイツのミュンヘンの戸建住宅のモデルハウスを見た時、50余点あるモデルハウスに クーラーが一つもなく、逆に 全ての住宅の窓にはブラインド・シャッターが付いていた。 ただ その時は「日本でもブラインド・シャッターを本気で考えねばならないのかな?」 と感じただけ。

日本では 「冬期の異常乾燥と、夏期の高温多湿に」 泣かされてきた。
これこそが最大課題。
ところが、ヨーロッパでは冬期が雨期で、異常乾燥などというものは毛ほどもない。 それどころか、温水ヒーターによる セントラル暖房が普及したので、「冬期にダニやカビが発生した、シックハウス症候群が大問題になってきている」 と、ドイツで開業医をやっている医師から聞いたことがある。 これが、「ヨーロッパには異常乾燥問題はないが、冬期に湿度が高すぎてダニ、カビが大問題になりつつある」 ということを知った契機だった。
しかし、夏期が乾燥期だというヨーロッパはうらやましい限り。 「南ドイツでも、ブラインド・シャッターさえあれば、クーラーがなくても快適な生活出来る」 という事実。
以来、私はドイツ発祥のパッシブハウスそのものについて、根源的な違和感を覚えるようになったのは事実。「日本の冬期の異常乾燥と、夏期の高温多湿については、パッシブハウス・テクノロジーとは別個に考えるべきものだ」 と。
このことは、「ドイツ生まれのパッシブハウスを決して否定するものではない。 パッシブハウスは尊重するが、日本には独自の除加湿の技術開発が必要だ」 と、課題が増大しただけ。

それと、東京では春や秋でも 窓を開けて風通しを考えることは邪道。 家の中がホコリっぽくなって掃除が大変に。 一切窓を開けなくて済む生活が出来る住宅こそが、とくに主婦から大好評。 ここら辺りが愛媛と大きく違うところ。
筆者は、家の中に外気の流れを作ることに 必死になっている。 しかし、換気さえしっかりしておれば、春であろうが 秋であろうが、爽やかな空気の流れは、外気に頼る必要は皆無。 安い価格で 自在な空気の流れは得られる。 ところが、雑巾がけをしたことのない男は、外気の流れに夢中になる。 これこそが、観念的な男のマスターべーション。 女性からは誰一人として賛同者が得られない!
私は この著作に対して、不必要なイチャモンを付けたように感じりれるだろう。 しかし、私がつけたイチャモンは、東京の多くの奥さん方からは 支援を頂いているもの。 決して侮ってもらっては困る。
それにしても、この著は それなりに良くまとまっていると思う。 ただ、東京周辺のことを考えると、つい文句の一つも言いだしたくなってくるだけだと考えて頂きたい。
ともかく、高気密・高断熱住宅では著者と握手は出来ても、各論となると地域需要が絡んでくるので、双手を上げて賛成とはいかない、ということだけはしっかりと伝えたい。





posted by uno2016 at 08:14| Comment(1) | 技術・商品情報 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これから日本の住宅のレベルを上げようと頑張ってるひとをよくここまで貶せますね
鵜野さんに失望しました
Posted by at 2016年01月10日 21:57
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