2016年03月20日

どうする地スギの処理! 住宅局に屈した林野庁の解決策は。



一昨年暮れから昨年秋にかけての林野庁の鼻息は荒かった。
「これで、伐採適齢期を変えた地スギを、CLT (クロス・ラミネーテッド・ティンバー) で、何とか処理出来る見通しが得られた‥‥」 と、ほっとした表情。
それが、4月に発表される住宅局の告示で、一転してズタズタのものになるのではないかと心配に‥‥。
ご存知のように、私は取材の第一線から引退して久しい。 これから書く記事は、住宅局や林野庁を取材した上のものではなく、責任を持てる内容ではない。 どこまでも推測記事。
したがって、「こんなバカなことを考える者もいる」 と、一笑してもらって良いもの。 そんな内容にすぎないことを、事前にお断りしておきたい。

小さい子供の頃に、次のような唄がラジオから流れてきた。
♪ むかし むかし そのむかし  椎の木 林の すぐそばに
  小さい お山が あったとさ あったとさ
  まるまる 坊主の 禿げ山は  いつでも みんなの 笑いもの
  「これこれ スギの子 起きなさい」  お日さま にこにこ 声かけた 声かけた

  1(ひい) 2(ふう) 3(みい) 4(よう) 5(いつ) 6(むう) 7(なな) 
  8日(ようか) 9日(ここのか) 10日(とうか) たち
  にょっきり 芽がでる 山のうえ 山のうえ
  小さなスギの子 顔だして  「はいはい お日さま こんにちは」
  これを眺めた 椎の木は  あははの あははと 大笑い 大笑い‥‥

昔の児童唱歌にあった、お国のためにと、ところ構わずに植えられた杉の木が、軒並み伐採期を迎えている。 その伐採に 困り果てていた林野庁が、恰好の処理先と目を付けたのが、ヨーロッパだけでなくカナダでも注目されはじめてきたCLT。
何しろ、地震のないヨーロッパでは、2~3年前から、この木質の5センチ厚程度の無垢板を交互に接着したCLTが、6~8階建の中高層ビルにも使われ出し、地震国のカナダでも採用を検討しているというニュースが飛び込んできた。
「厚いスギの無垢材が使えるCLTがあったとは。 しかも、ヨーロッパでは6~8階建のビルにも使われているそうな。 こんな有難い救世主か現れてくるなんて‥‥」 と、林野庁が 欣喜した風景は、よく想像出来る。

ところが、困ったのは国交省の住宅局。 いままで 木造だけでなく、鉄筋コンクリート造や鉄骨造を含めて、建築基準法で一括管理してきた。 確かに40年前に、北米のツーバイフォー構造が、住宅局長と金融公庫の全面的な支援によって、告示の中に書きこまれたことがあった。
しかし、建築基準法は住宅局の命綱。 他所の人間が、どんな理由があるにしろ 勝手に書え換えたり、付け加えることは絶対に許されない。 局内には、そんな不満が充満していたので、K課長が局内向けに否定的なアナウンスをしなければならないこともあったよう‥‥。
これに対して林野庁は、「与党の最大の応援団である山持ちが、スギの伐採問題で困っている。
このことは、通商産業省も総務省も良く分かっている。 分かっていないのは、国交省の住宅局だけだ」 と、圧力がかかったのだろうと推測。
その結果、意固地になっている住宅局の言い分が認められて、告示という形になった‥‥。

この告示の原案を見たら、今までの建築基準法と変わるところがない。 住宅局が作成したとなると、こんなものにならざるを得ない代物。
基準法で虐められてきた人間にとっては、当然すぎるほどの内容。 むしろ 攻める側の林野庁の配慮の足りなさが目に付く。
ドイツの南に接しているオーストリア。 ここでCLTで 20年近くの実績を持っているのはKLH社とTHOMA社。 2社ともに厚い無垢の板を交互に積層して、鉄筋コンクリート造なみの強度を持たせたことには変わりがない。 ただし、KLH社は、接着剤を用いて強度を担保している。 そして、6~8階建の中高層ビルにトライしたのも同社。 このため、約3×15メートルほどの長い壁や床パネルを製造する工場を建ている。
この長尺パネルが、中高層建築を可能にしたと言って良かろう。
8年前に、仲間と同社を訪れた時は、まだCLTパネルという呼称はなかった頃で、同社では 「マッシブホルツ」 と呼んでいた。 15ミリ程度の外壁と床パネルの2階建ての現場を見せてもらったが、取り立てて騒ぐほどのモノではなかった。

むしろ、日本でお馴染みだったのは、長野・原村に本社を持つ自然の住まい社。 28年前に設立されて、2000年からTHOMA社の日本総代理店となっている。 「ピア・ウッド」 が看板。
つまり、CLTでありながら、接着剤と建築金物は 一切使っていないことを売りにしていた。 板と板はダボで緊結していて、接着剤が原因となるシックハウスとは完全に縁を切っている。 また、静電気も起きない住宅。 しかも壁・床とも厚みが17センチで、10年前ぐらいに壁倍率8倍の戸別認定をとっている。
土台を跨ぐように壁を取りつけており、建築金物は使っていないが、1階床と屋根パネルはステンレスの線で結んでおり、耐震面で最も評価出来る住宅の1つ。
ただ、何回も書くことだが、単価が坪100万円以上と高いのが最大の難点。 また 社長だけしかいないという点も気になる‥‥。

この建築現場を見ていただけに、住宅ジャーナル4月号の全身建築金物で覆い尽くされていた写真には、ものすごく違和感を覚えた。
やはり、サッシは壁をくり抜くようにして、垂壁とか腰壁を建築金物で結ぶと言うのは、どう考えても邪道。
つまり、住宅局がイチャモンをつけたくなるような構造体であることが、そもそも問題ではなかろうか? 
ということは、準防火面で無垢の木肌を見せる条件から、3階建しか出来ないと言うことだと、床厚の35センチはやむを得ないにしても、壁厚の25センチは過剰強度であり、いたずらに価格を高くしている気がしてならない。
それよりも、林野庁にとって痛いのは、CLTが地場スギの救世主ではないことが明確になったことかもしれない。

5年前の2011年3月5日付のこの欄で、林野庁の委託研究でツーバイフォー工法で、如何にして地元のスギなどを活用して行くかと言う研究発表を行っている。 その時は、ただ各機関の発表内容を紹介しただけ。
しかし、全体の新設住宅の着工数が落ち込んでいる現在、もっと在来木軸工法とツーバイフォー工法とのドッキングを考えて、価格を抑え、木造と地場スギの活用を考える必要があると、真剣に考えるようになってきた。 
そのヒントを与えてくれたのは、渡辺建築都市設計の所長。
「アメリカの住宅の単価は驚くほど安い。 その原因を詰めてゆくと、木造なら日本でも十分に安く出来ることが分かった。 ともかく、一般建築ではない。 アメリカの住宅から学ばねばならない」 と確信をもって渡辺所長は語る。 それだけの実績をあげているから確信的に発言出来るのだろう。
しかし具体的なことは、まだ何も教えてもらってはいない。
しかし、私が眼を覚まされたたのは、間違いなくアメリカの建築現場。
そして、金物工法にしても、高すぎるというのが私の率直な印象。

木軸の中にツーバイフォーの考えを入れるのか、ツーバイフォーに木軸の考えを入れたらよいのかもわからない。
しかし、CLTに依存しなくても、コストを下げ、林野庁を安心させる方法があるらしいのだが‥‥。




posted by uno2016 at 07:46| Comment(0) | 技術・商品情報 | 更新情報をチェックする
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