2016年05月10日

JAL (日本航空) の再建を巡って奮闘するお馴染の半沢直樹 !



池井戸潤著「銀翼のイカロス」(ダイアモンド社 1500円+税)

銀翼.JPG

東京中央銀行営業2部の次長・半沢直樹氏を主人公にした 「半沢直樹シリーズ」 は、2年前のTBS系テレビ 日曜劇場で放映済みのもの。 第1弾の 「オレたち バブル入社組」、 第2弾の 「オレたち花のバブル組」、 第3弾の 「ロスジェネの逆襲」 の3冊は読んでいた。 ところが 第4弾となった2014年の作品 「銀翼のイカロス」 は、連載中の週刊ダイヤモンドをふくめて 読んではいなかった。 全くもって反省ごと。
新刊の小説の中には、なかなか面白いものが見当らない。
やむを得ず古い作品を漁っていたら、幸田真音の 「ランウェイ」 (上)(下) と 「スケープゴート」 と、この作品の4点を発掘することが出来た。 個人としての情報収集の限界を示している好例と言って良かろう。 ともかく私個人としては、資料を集めることと、集めたものを読破することに、限界を感じている。
イカロスというのは、ギリシア神話に出てくる話。 
ミスノ王によって牢獄に繋がれた父と子。 人工翼を作って脱獄するのだが、父親の忠告を無視した子の操縦士が、太陽に接近し過ぎて翼が溶けてしまい、エーゲ海に墜落してしまう物語。

しかし、この物語では主人公が墜落するどころか、最後まで主張を貫いて生きている。
当時の民主党は 「殿様商売をしていて、再三問題を起しているJALではあるが、ここは 銀行に泣いて貰って債権を放棄してもらう以外には救済の道がない」 という党の方針に従い、新任された国交省の女性大臣は 法的根拠がないのに 「タスクフォース」 を設立し、及原弁護士をリーダーに据えた。 
ここから、この小説はスタートしている。
一方、JALを根本的に救うには、「今までの開銀の動きに同調している融資部を窓口にしていたのではラチが明かない」 と判断したのが、東京中央銀行の中野頭取。
なんと窓口を営業第二部へ移し、JAL問題を 半沢直樹次長の支配下に置いた。 置かれて迷惑をしたのは半沢次長。 前政権下で 東京中央銀行が500億円にも及ぶ債務放棄をしなくても、なんとか 大幅のリストラによるコストカットで、JALが自力で再スタートが出来る絵を書いて、これを公的に認知させた。
そこへ、登壇したのが民主党の新政府。
JALは、その高額収入にふんぞり返っている企業体質にメスを入れることなく、いたずらに前政権のあげ足取りが目的。 赤字路線を改善することなく、「国民のため」 と言う 欺瞞的な言動で民主党案の強行突破を図った。

最初に開かれたタスクフォースの会議で、その設立の法的根拠を 半沢から指摘された女性国交省大臣は、まともに答えられず、「JALの社会的な存在意義を力説して、民間銀行が債務放棄に協力するのは当然のこと」 と一方的にまくし立てた。
これに対して、半沢は 「冗談ではない。500億円もあったら、どれだけの中小企業を 救えることかを考えて頂きたい。 JALという半官半民の企業が、自らのリストラで 問題を解決しょうと考えて、広く国民の支持を得ている。 それなのに、一方的に銀行側だけに債務を放棄せよと言われることには、スジが通らない」 と反論。
もちろん、民主党側から明快な回答は得られなかった。
私は、単なるアンチ民主党論者ではない。 議論すべきところは正しく議論し、銀行側に問題点があるなら、堂々と主張すべき。 しかし、JAl問題では、銀行側でなくJAL側により問題点が多かったのは事実。 したがって、一方的に銀行側を責めることには、当時から納得出来かねた。

一方、タスクフォースのリーダーに選ばれた及原には、開銀と共に東京中央銀行に債権500億円を放棄させる自信があった。
というのは、かつて小沢一郎と思わせる政治家への不正融資・マネーロンダリングに 東京中央銀行の紀本常務が、深く関わっていた事実を知っていたから‥‥。
空港の新設情報を知って、小沢代議士か20億円を投じて空港になる予定土地を買い占めて、巨額の利益を上げていた。 その事実をバラすと紀本常務を脅かせば、500億円の放棄は 拒否できないという目論見。 当然、このタスクフォースを成功させることにより、「弁護士・及原が有名になり、次々と相談がくるようになる」 というのが読みの底に潜んでいた。
同時に、金融庁の検査官にも手を回し、東京中央銀行に対して 査察を行い、「債権放棄に協力しないと、とんでもない事態になるぞ」 との脅かしも仕掛ている。

半沢次長は、紀本常務を通じて無担保に近い形で20億円という融資が、過去に 小沢一郎に行われていたことを発見。 しかし、その融資の詳細を書いたファイルが行方不明。 おかしげなことだと調べたが、どうしても詳細が分からない。
だが、紀本常務の部下が融資担当者になっており、しかもファイルは その部下が管理していたことが判明。 そこで、旧知の検査部・富岡に探ってくれるように依頼。
富岡は、紀本常務が小沢一郎への不正融資・マネーロンダリングに関与していた資料を発見して 半沢次長に報告するとともに、旧知の中野頭取にもその資料を渡している。
この結果、民主党が計画したJAL再生タスクフォースは瓦解に瀕するとともに、小沢は離党し、女性国交省の大臣も辞任することになった。

そして タスクフォース最後の会議に、中野頭取が出席して、「500億円の債権は放棄します」 と
演説するはずであった。
ところが開銀の谷川氏の尽力により、開銀が債権放棄をしないことが明確になり、中野頭取の代理で出席した半沢次長は、声を大にして「東京中央銀行は、一切債権の放棄と言う愚挙は致しません」 と明言した。

その後のJALの再建は、皆さんもご存知の通り。
私は、今更ながら半沢次長のことを褒める気はしない。 
しかしこの解決を機に、紀本常務と共に頭取職を辞職した中野頭取の英断には、心から拍手を送りたい。




posted by uno2016 at 13:01| Comment(0) | 書評(その他) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。