2016年11月29日

本当に健康で、100年間性能が劣化しない住宅は可能か?  (中)




まず、前回の表の間違いを訂正したい。
北海道Ⅰ地区のQ値は1.6W/㎡k、東北Ⅱ地区1.9W/㎡k、東北Ⅲ地区2.4W/㎡k、関東以西Ⅳ地区2.7W/㎡kまでは記述どおりで正しい。 ただし、関東以西Ⅴ地区は同じく2.7W/㎡kであり、沖縄のⅥ地区が3.7W/㎡kとなる。
同じくUA値では、北海道1と北海道2はともに0.46Wであり、東北3が0.56Wで、東北4が0.75W。
そして関東以西の5.6.7地域がそれぞれ0.87Wであり、沖縄が(-)になっている。
文字の多寡により、数字の位置がズレたことを、まずお詫びしたい。

さて、いよいよ本論。
その前に、前回2回にわけて 「住宅の100年劣化」 問題を取上げるつもりだと書いた。 しかし 4つの問題点を取上げた関係上、とても2回では終わりそうになく、3回にも及んだことを、併せてお詫びしたい。
住宅の 「気密性」 に関しては、今までに本格的に議論されたことがなく、私も安直に考えていた。 その考えの甘さを、まずお詫びしなければならない。

この著書では 震度7を記録した1995年1月の阪神淡路大震災や、2011年3月の東日本大震災のことも取上げており、「現在のところ過去20年間に震度6以上の地震が42回もあり、年に2回以上は震度6以上に見舞われている勘定になる。 したがって、最低限 震度6の地震に耐える住宅で なけれはならない」 と、警告を発している。 それが、あまりにも他人事のように書かれているので、大変に気になった‥‥。
すでに書いたことだが、私は阪神淡路大震災は 「大阪では大きな地震がめったに起らない」 と大工をはじめとした 建材業界がタカをくくっていて、3寸の通柱とか9センチ角の通柱を平気で使っていた業界にこそ、大部分の責任があると断じざるを得なかった。
建材業者に聞いた話では、「運送の途中で通柱が折れることがあるので、ソロソロと注意をしながら材料を運んでいた‥‥」 と証言した。 こんなありさまだったから、神戸の市内の住宅は 軒並みに通柱が折れ、1階で寝ていた老人をあっという間に殺してしまった。 阪神淡路震災の直後に 私も神戸を視察したが、あの現場は 《殺人事件》 の現場以外の 何物でもなかった。 何しろ、鉄筋の入っていない現場が半分近くもあるのには呆れてしまった。
また、2011年の東日本大震災は、その揺れる時間が長時間に及んだことと、想定外の津波の被害が大きかったことを除けば、耐震面ではそれほど大騒ぎするほどのことは皆無。

私が今までに出会った地震の中で、もっとも被害が大きく、直下型の地震の怖さを知らしめてくれたのは、2004年暮れの中越地震。
何しろ、私は地元の渡部建設社長に、4度も川口町の最烈震の現場を案内してもらった。
最初に「新潟地震」 を聞いた時は、私の関心事は地元にツーバイフォー建築物がどれだけ建てられているかということにあったのは事実。 たしかに、長岡市とか小千谷町にはツーバイフォー住宅が建てられていたが、地震の中心部はことのほか積雪が深い地域。 ほとんどは1階はコンクリート製の高床住宅で、冬期は2階から出入りしている。 4寸角の通柱を使った在来木造住宅地域だと聞いて、がっかりしたことを覚えている。
ところが、この地方では トステムのスーパーウォール工法が好評で、かなり売れていると聞いていた。 このスーパーウォール工法は在来木軸工法で、外壁に構造用合板を張っており、内壁は12.5ミリの石膏ボード仕上げ。 幸いなことに、スーパーウォール工法だと十日町周辺で頑張っている地場の工務店を知っていた。
早速電話をして、震度6地域での被害状況を案内してもらった。
ところが、震度7の烈震地は川口町に集中していることを知り、トステムの紹介で地元最強の工務店・渡部建設を紹介してもらった。 この渡部建設は、地元の役所から頼まれて、川口町周辺の烈震地の情報には詳しかった。 といのは、その烈震地の中に何棟かのスーパーウォール工法の建築物を建てており、消費者に密着していて スーパーウォール工法に関しては、一番ピチピチした活きた情報を持っていた‥‥。

これほど恵まれた取材はない。
渡部建設の社長は、アケスケに問題点を指摘して、企業秘密になるようなとこまで見せてくれた。
その貴重な取材報告は、私のホームページの 「05年以前の今週の本音」 欄に掲載していたので、その欄を見ていただこうと考えた。 ところが、私のホームページの主催者は、「10年以上の昔の話は色あせており、価値がない」 と判断したらしい。 調べると、「06年の今週の本音」 を含めて、10年以上の古いデーターはすベて抹殺。
そんなことも知らずに、呑気に 無料サービスの昔のデーターを調べて頂こうと考えた私の意識に問題があったようだ。
改めてお詫びを申したい。

この4日間の 「中越地震の調査」 を通じて、私は松本氏の著書には出てこない貴重なことを学ばせて頂いたと考えている。
①つが、直下型の震度7という揺れがもたらす在来木造住宅の被害の大きさである。
②つは、損傷した気密性能を回復するための工事の難しさ、である。
③つは、RC造の気密性能の再確認である。 RC造の断熱性を高めるために取っているドイツの手法から学べる点が非常に多いのではないか、ということ。
④つは、木質パネルの重要性の認識の重要性と、アメリカやカナダなど 北米における耐火性を高めるためのドライ・ウォール工法の再認識。 
この4点について、「百年健康住宅」 は、あまりにも楽観的にすぎると考える。 問題の所在を意識的にはぐらかしているか、わざと隠していると思える点が多々見られた。
それでは、4つの問題点について、1つずつのんびりと考えて行きたい。

まず、中越地震の烈震地の在来木軸工法の被害のひどさ。
私は、最初は震度6程度の、十日町周辺のスーパーウォール工法の被害調査から入った。
どの家でも積雪2メートル以上の地域なので、最低でも4寸柱を使っており、なかには5寸の通柱を採用している住宅もあった。 その5寸柱の家も倒壊していた。
その中で、烈震地にあっても 倒壊していなかったのがスーパーウォール工法。 しかし、ほとんどのスーパーウォール工法の現場では、内部のボード工事には損傷が見られた。 ひどいのは、開口部周辺の亀裂。
しかし、スーパーウォール工法は、外壁に構造用合板を採用していたので、開口部周辺の亀裂の被害は非常に少なかった。 変わりに目立ったのは、ボードの隅部に張られていた 45ミリとか90ミリという細いボードの破損。 これは、全戸で発生していた。
つまり、北米やのツーバイフォーのように、4×8尺の石膏ボードを先端を切落して横張りで採用しておらず、日本のツーバイフォー工法が開発した間柱に、450ミリ離れた 38ミリの間柱から石膏ボードを張出すという方法も採用していなかったので、日本の在来木軸工法にまとわりついている固有の欠陥。 スーパーウォール工法だけを責めてもしょうがない基本的欠陥。
おそらく、FPの家でも、在来木軸工法の伝統を守っているはず‥‥。 だから、震度6強でも同じような問題が起きているはず。 よく震度6でも問題ないと断言できるその強心臓ぶりには、思わず降参。
そして、渡部建設に案内してくれた川口町の烈震地・武道窪ではスーパーウォールを除いた20戸全部が倒壊し、田麦山では100戸ある住宅のうち、「90%近くは全壊して 住めないのではなかろうか」 と、渡部社長は語っていた。
4寸柱の全戸が倒壊しているのですよ。 この被害を見た時、私は直下型の震度7の怖さに、身震いさせられた。

そして、武道窪で1戸だけ倒壊を免れたスーパーウォールに住んでいる奥さんが、「たしかにわが家だけが残った。 そのことに関して 住宅メーカーと工務店の努力に対して感謝の気持ちで一杯。 だが倒壊しなかったというだけで、かつてのわが家とは全然違う。 気密性が失われて、前の坂道を走る車の音に悩まされて眠ることも出来ない。 この気密性能の損傷は、誰が どういう形で保障してくれるのでしょうか?」
奥さんに言われて、私も“ハッ”と気付いた。
最近では、猫のシャクシも高気密を叫んでいる。 しかし、その中に 「気密性を保障します」と言っている人は本当にいるのだろうか? 今の法律体系では、家が倒壊しなくて、命が助かれば良しというものではなかったか?
「震度7強の地震が来ても絶対に大丈夫だと保障をし、気密性能は50年後でも1.0c㎡/㎡を保障します」 と言い切れる会社が、この世に本当にあるのだろうか?」
もし、1.0c㎡/㎡の性能を保障すると言うことであれば、1戸に対して最低2000万円は必要になってくる。 川口町の烈震部だけで安く見積もっても、最低40億円は必要になる。 こうした費用は、現行の法体系では、全て消費者の負担になるのではなかったか?

これが、私が12年前の川口町で感じた恐怖。
そして、私の力では何とも出来ない無力感。 明大の元教授で東大元講師であった 「日本の木質構造の神様」 と尊敬されていた杉山英男先生のお力に頼るしかないのではないか…。 そう思った私は、新潟地震の問題点を整理して、杉並の先生邸へ伺いしょうとしていたその日に、杉山先生の逝去を知らされた。
唯一頼りにしていた杉山先生の逝去は、予想以上に重いものだった。 以来 私のなす術はすべてなくなったと考えてよい。

もし 松本氏が、「その保障を 約束してくれるのなら、喜んで近大ホームをヨィショしたい」 と言うのが、私の基本姿勢。 しかし、氏の著作を読んでも、残念ながら 「気密性能」 に関する保障の件では、残念ながら読みとれない。 
私の読み落としであることを、どこまでも祈念したいと思うのだが‥‥。




posted by uno2016 at 16:45| Comment(0) | 技術・商品情報 | 更新情報をチェックする
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