2017年02月10日

ハラスメントの、具体的なグレーゾーンのさばき方!


鈴木瑞穂著 「現場で役立つ! セクハラ・パワハラと言わせない部下指導」 (日本本経済新聞社 1600円+税)

英語の 「ハラスメント」 のことを、日本語では 「嫌がらせ」 とか 「いじめ」 と言う。
このハラスメメントには、なんと30~32種類もの種類があるという。 いわゆるセクハラとかパワハラをはじめとして、ドクハラ、シルハラ、アカハラ、モラハラ、マタハラ、ブラハラ、エアハラ、ハラハラ、スモハラ等々‥‥。
この本では、主にセクハラとパワハラに的を絞っている。 日本を代表する二つのハラというと、この二つに絞られるらしい。
この著の特徴は、「グレーゾーン」 のさばき方にあると強調している点。
つまり、本人がいくら 「セクハラだ」 とか 「パワハラだ」 と叫んでも、本人が勘違いしている場合がほとんど。 この見際めが大切だと著者は説いている。
とくに 「パワハラ」 の場合には、多い。
たしかに 言われてみると 「セクハラ」 とか 「パワハラ」 の場合は、グレーゾーンをどう裁くかによって、結果が大きく異なってくる。 グレーゾーンに的を当てた著作は 少なく、この本が「最初で最後」 になるかもしれない。

企業で働く社会人にとって、「セクハラ」とか「パワハラ」という言葉を 知らない人は皆無。 それは新人社員だけでなく、就職する以前からこの問題が 全ての企業にあることを知っている学生がほとんど。 しかし「セクハラ」とか「パワハラ」 について、その言葉の意義について 正確に勉強した人はいない。
つまり ほんどの人は、その本質と正確な定義を知らないままに、相手が「セクハラだ」「パワハラだ」 と言われれば、漠然とした自己流のイメージで間違った解釈で、納得した気分になっている場合がほとんど。
いま、全国の職場で問題になっているのは 「職場を運営して行く上であってはならない言動」そのもの。
そのうち 「人間関係のもつれから発生しているのが セクハラ」 で、「マネージメントセンスの不足」 から発生しているのがパワハラ。

ご存知の通り1987年の「福岡出版社セクハラ事件」の提訴で、そして 1989年には「セクハラ」が流行語大賞に選ばれ、多くの人の知るところとなった。 しかし、本書では1989~1997年にかけては、いろんな事例の蓄積時代だったと著者は語っている。
一口に「セクハラ」と言っても、 何を基準に「これは間違いなくセクハラだ」 と言えるのか、また 「セクハラではないと言う根拠は何か」 という点が非常にあいまい。
もっとも分かりやすいパターンは、男性上司がその地位を利用して 部下の女性に性的な関係を迫り、それを断ると女性部下に対して、「不利益な労働条件を課す」 というもの。
しかし、2007年にセクハラ条件が政府によって改正され、それまでは「加害者は男性、女性は どこまでも被害者」 という発想を転換した。 つまり 「逆セクハラもあり得る」 と認めたこと。
これは 大きな進歩だったが、やはり大きかったのは、1989~1997年にかけて行われた事例蓄積の効果。 これによって 膨大なセクハラに対する 実態と裁判例が報告され、いわゆる「越後屋の旦那衆」が激減している。

そして、本著が強調しているのは、本人が無自覚の上で起っている幾多のセクハラ。
それは 「相手がセクハラだ」 と感じたら 「セクハラになる!」 と言う 事実を知ることからはじまる。
これは、お互いに気をつけなければならない最重要課題。 
例えば下記の事例のすべてが、それに入るのですぞ‥‥。
●相手に対して、フランクさを示すために、「~ちゃん」 とちゃん付けで呼んだ場合に、相手が嫌がれば、これは明らかにセクハラ。
●自分のデスクに、ヌードのポスターや 家族の写真を飾るだけでも、相手に不快感を与えればセクハラになる。
●女性従業員に、相手に対する溢れるばかりの信頼をこめたボディタッチであっても、相手が 嫌がればセクハラ行為に。
●小学生の頃から下ネタの話をしていて、社会人となっても 雰囲気を和ますために下ネタの話をすることは、許されない。
●修業時間外に、女性従業員をリラックス出来る飲食に誘い、女性の本音を聞きたい と思っても相手が断ればセクハラに。
●カラオケで、もともとデュエット曲なので、女性従業員に「一緒に歌おう」 と誘っても、女性が断った場合は、無理強いは出来ない。
●昔から、宴席で女性従業員に「お酌」を要求するのは当り前。 しかし、女性が断った場合は無意識にグラスを差出すことは許されるない。
●相手の年齢や 肉体的な欠陥を冷やかしていると取られる行為は、如何に軽い気持ちで言ったにしても、許されることはない。

このような、無自覚なセクハラが続いている。
いずれも、女性が 「セクハラだ」 と感じた時点で 「セクハラ」 という判例が 多く出されている。 どんなに男性がジタバタしてもダメ。
これに対して、「パワハラ」というのは、1990年台に、バブルがはじけて、日本経済は 極端な不況に突入した。
その2003年に、和製英語として開発されたのがパワハラ。
その動機になったのは、岡田康子著 「許すな! パワー・ハラスメント」(飛鳥新書) だったと筆者は言う。 
そして、セクハラの場合は、女性が 「セクハラ」 だと感じたことは、すべて 「セクハラ」として処理されている。 これに対して「パワハラ」 の場合は、自己流の解釈は 一切認められない点だとこの著に書いてある。
細部は省略するが、女性従業員がセクハラと感じた時点で、全てが「セクハラ」 と認定されるよりは、かなり進歩しているように考えらるのだが‥‥。



posted by uno2016 at 10:36| Comment(0) | 技術・商品情報 | 更新情報をチェックする
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