2017年02月18日

三神英彦原案・澤田石誠著「ぼく、学級会の議長になった」 (星雲社 1400円+税)

ぼく、学級会の議長になった.jpg

この本の副題は 「小中学生から始めるファシリテーション入門」
最近、やたらにヨコ文字を使った著書が多い。
簡単なヨコ文字なら なんとか理解が可能だが、「ファシリテーション入門」 と言われて、
その意味を完全に理解出来る人は、いったい 何人いるだろうか?  それとも私の語学力が
低すぎて話にならない、と言うのなら黙って引下がるしかないのだが‥‥。
ファシリテーションとは 英語のFacilitationのこと。 「会議、ミーティング等の場で
、発言や参加をうながしたり、話の流れを整理したり、参加者の認識を一致させたり、
合意の形成や相互理解をサポートすることによって、 組織や参加者の活性化・協業を
促進させるべく リーダーが持つべき貴重な能力の一つ」 と、ウィキペディアには書いてある。
詳細なことは、各自で調べていただきたい。

小学6年生のぼく。 学校への登校はやたらに早い。 なんと 毎朝7時半には教室へ着いて
いるという。 皆には 「両親が共稼ぎなので、朝が早いせいだ」と言ってあるが、事実は
違う。 たしかに共稼ぎであることは間違いない。 しかし、両親と一緒に家を出ると教室へ
着くのは8時過ぎになる。 だが1時間半前に教室へ着くのは、誰もいない教室で「今日は
どんなことか起るか」 を想像するのが秘やかな毎朝の楽しみだから‥‥。
 
こんなことを言っても誰も信用はしてくれない。 したがって、両親にも内証の話。

そのぼくが、「そろそろ8時か‥‥。 次に来るのは ぼくと同じ両親が共働きの航君か、
それともクラス一の慎重派で早く着いていないと気が済まないさくらか? あるいは
最近一人でこっそり鉄棒の特訓を始めた蓮君か?
足早の靴の音が廊下から聞こえと思ったら、ガラガラと教室のドアを開いたのは担任の
裕子先生だった。 予想もしない展開にびっくりして、「お、おはようございます」と
ぼくはあわてて挨拶をした。
裕子先生は、ぼくが2年生の時に初めてうちの学校へやってきたから、今年で5年目になる
若い先生。 やさしく思いやりがあって、生徒からの人気も高い。
「おはよう、樹 (いっき) 君。 いつも早いわね」
ん。 いつも?
先生は、ぼくがいつも7時半に登校することを知っているのだろうか? 

裕子先生は いつも授業が始まるベルが鳴ってから教室へ入ってくる。 今まで1度も 8時前の
早い時間に裕子先生が姿を現したことはなかった。たからビックリした。
「実は、今日の5時間目の学級会についてだけど、一つお願いがあるの」
「なんですか?」
「今日の学級会は学芸会の発表について話し合おうと思っているけど、そのための専用の
議長団をつくることにしたの。 そこで、樹君に議長をやってもらいたいのよ」
「え!」
耳を疑った。 議長と言うのは、学級会の司会役だ。 ただでさえ人前に出るのが不得意で、
普段の授業だって手を挙げることに恐怖を感じているのに、議長なんて務まるはずがない。
いきなり、何を言い出すんだ、この先生は?
「ぼくが?」
「そう、樹君が」
「‥‥‥」
胸に、ドス黒い緊張感が走った。

裕子先生の目はぼくをじっと見つめている。 裕子先生はとてもおだやかで やさしい表情を
しているが、その目からは強い意志がビンビン伝わってきた。
「大丈夫、樹君ならできるよ!」
「でも、ぼく、ぎ、議長なんてゃったこともないし、やりたいと思ったこともない!」
「誰だって、初めての時はやったことがないものよ」
「そりゃそうですが‥‥」
「そんなに心配する必要はないわよ」
「はあ‥‥」
「やってくれるわね」
「‥‥‥‥」
断りたくて、心臓がバクバクしている。 しかし、本当に断れるのか‥‥。
結局は、裕子先生に押切られてしまった。 何と言うことだ。
えらいことになってしまった‥‥。

この小説は、たったの100頁。
それでも、プロローグやエピローグ以外にも5章から成っている。 大変短い小説。
それでも、最近読んだ小説の中で一番感動させられた。
第2部には、著者が言うところの「小中学生から始めるファシリテーションの入門」 や
第3部には 「お勧め図書紹介コーナー」 が設けられているが、これはどこまでも
「付け足し」 に過ぎないようだ。


posted by uno2016 at 23:58| Comment(0) | 書評(その他) | 更新情報をチェックする

2016年11月19日

NHA (心を育てるアプローチ) と言う言葉を聞いたことがありますか?

山本麗子著 「逆転のコミュニケーション法  NHA のこころを育てるアプローチ」(じ
ゃこめてい出版 1300円+税)

91Kvc3GLeML.jpg

最近、やたらに 「ほめ言葉」 が叫ばれるようになってきた。
経済関係の著書でも、この「ほめ言葉」の重要性を唱える記事が多くなってきている。
「ほめ検定」 という言葉が流行しているほどだと聞く。
昔の日本の諺に、「豚もおだてりゃ木に登る」 という言葉があるくらいで、やたらに
「ほめ文化」 が流行っているらしい。 ところが最近の若者は 「ほめ言葉」 に強く
、「ナイス」 と言われた程度では、ほめられた気がしないらしい。
したがって 「ほめ検定」 という言葉が流行しているように、中高年の管理職には若者
をおだてて、その気にさせるのは大変なことらしい。

ところで、皆さんはNHA (The Nurtured Heart Approuch) という言葉を 聞いたことが
あるだろうか? 意味は「こころを育てるアプローチと言って、若い人の心を掴む 新
しいコミュニケーション術らしい。 正直言って私はこの書を読むまでは、NHAなどとい
う言葉すら 知らなかった。
まして、「逆転のコミュニケーション法」 だと言われても、トンチンカンも良いとこ
ろ。
この学説を唱えたのはアメリカのハワード・グラッサーさんで、すでに世界には有資格
の認定のトレーナー2000人が頑張っていて、あっという間に全世界に拡がった思考法だ
という。
私も最初は、大変に難しい思考法を想定していた。
何しろ、この本を書いた山本麗子さんというのは、心理カウンセラーとして日米で活躍
中の現役。 その心理カウンセラーという肩書に、ビビったという面があったとしても
許されるだろう。
それに、この著書も見出が大変に難解。 よほど難しいことがかいてあるような気がし
て、読みはじめるまで時間がかかった。
なんと言うことはない。 難しそうな表現を一切やめて、この著書の題名を 「簡単な N
HA 法を体得するだけで、貴方もカウンセラーになれる!」 とすべきだった。 「逆転
の コミュニケーション」 などと言われても、その意味を正しくが理解できる人が、ど
れほど居ようか。

筆者は 「心理カウンセラー」 として、全国の母親や里親から、毎日山のような相談を
受けている。 「子供が、発育障害と診断された。 どう対処したらよいのか?」 とか
、「子供の盗みが見つかって警察に呼ばれた。 どうしたら良いのでしょうか‥‥」 と
か、「30歳台の子供が鬱で、精神科の入退院をくりかえしている。 毎日のように死に
たいとい言う。 家族として何とかできることはありますか?」 とか、「うちの里子は
、PTSD (心的外傷後ストレス障害) の診断を受けているが、虐待されているようだ。
どう対処したら良いか?」 などなど、相談ごとは尽きない。
外部のカウンセーリングのほかに、我が子も夫も自分の思うようにならなくて、家庭が
破壊寸前になってきた。 しかしADHD (注意欠除・多動性障害) の本を読み、「子供や
夫の不満が、より自分の存在を知って欲しい」 ことに原因があることを知り、思考錯
誤してなんとかして NHA の本にたどりつくことが出来た。
そして、夫もこの本を読み、子供の意図も分ったので、なんとか我が家の中に平和を取
り戻すことが出来た。
いらい筆者は、 NHA 熱烈なファンになり、この NHA の伝道者として、六面八ピの活躍
を 続けている。 そして、本職の心理カウンセラーの方もうまくいっていると言うから
、文字通り鬼に金棒‥‥ということらしい。


この NHA の説明は難しい。  私などは「厳罰主義の教育論」の中で育ってきているの
で、「少しでも子供のよいところを誉めましょう」 と言われても、ぴんとこない。
40歳台の英語の女史教授が、NHA を使って成功した例が示してあった。
とある女子学生は、ふざけたり、おしゃべりで授業の進行を邪魔するので悩みのタネ。
「ここは、特別にカネと時間を使ってわさわざ学ぼうとするところよ」 「やる気がな
いなら、お父さんやお母さんを呼んでやめてもらいます」 「休みの時間は、いくらお
しゃべりしてもいい。 しかし覚える時間は覚えましょうね」 とすごいエネルキーで注
意しても、黙るのは一瞬。
その時、NHA に出会い、今までの 「出来て当り前」 だったレベルを下げて、その子の
可能性や、出来ていることの素晴らしさほめるシャワーを浴びせはじめた。
いままでは、「おしゃべりとおふざけ」 を止め指すことに 大きなエネルギーを使って
いたのだが、そのふざけ行為がなくなったきたのだ。 その瞬間を見逃さず、「言葉に
して伝え、祝いました」 という。
面白いように、その子が変わり始めた。 最初は、けげんそうで、恥かしがっていたが
、3ヶ月で完全に変わってくれた。   このような体験談を聞くと、私のように 「厳罰
主義」 の中で育ってきた人生訓そのものを、変えねばならないことに気付かされる。
posted by uno2016 at 23:32| Comment(0) | 書評(その他) | 更新情報をチェックする

2016年11月06日

不定期刊への移行 (時折書かせていただきます‥‥)   鵜野日出男

ご案内の通り、私は記者として長年にわたって記事を書いてきました。
そして、第一線を離れた後も、「高気密・高断熱住宅」 の記事に関しては、皆さま方の
強いご支援が得られたこともあって長期間、ホームページに記事を書かせて頂きました。
つまり、私は3つのテーマーを中心に記事を書いてきました。
1つは、5、10、15、20、25、30日を中心にした月に6日間の 定期的なブログ・「今週の
本音」 欄です。 2つは 毎週金曜日に発行する 「独善的な週刊書評」 欄。 このほか
に3つ目として思いついた日に書く 「ネットフォーラム」 欄がありましたが、今年に
なって 悪質な書込みがあったので、思いきって廃刊にしました。 このため、当欄を
ご活用頂いた多くの皆様方にご迷惑をおかけいたしましたことに対しては、衷心より
お詫びを申上げます。
私といたしましては、悪質な書込みは絶対に許せないモノでした。

その間、常に高気密・高断熱住宅に関しては、誰にも負けないという自負がありました。
つまり、日本の住宅を救うのは 「高気密・高断熱住宅」 しかないという信念。 この
信念は今でもいささかたりとも変っていません。 換気を入れるとガタガタな鉄骨造よりは
100ミリ厚の不燃の外部石綿ボード入りのRC造の仕上の方や木質構造物が遥かに魅力的。
しかも日本の夏と冬は、除加湿が欠かせません。
しかし、今年の6月に満82歳の誕生日を迎えたときから、私の考えに 変化が生じました。
それは 「いつまでも、私が第一線で頑張っていてはいけない。 これでは、半永久的に
若い人が育ってこない!」 という焦燥感です。
誰も、私に直言する人がいない。 自分自身の判断で 「そろそろ、引退を考えなくては
いけないのではないか?」 ということ‥‥。
つまり 「最近の私の話には、これはという革新的な事例が少ない。これではいけない」
と言う自戒。 この考えの実現に向けて、大きく一歩を 踏込まなくてはならないと
いう決断。

それが、ホームページの刷新。

ともかく、月に6回も掲載していた 「今週の本音」 と、毎週金曜日に 発刊していた
「独善的週評」を、とりあえず不定期刊にするというもの。
これをすでに ご存知の通り、先週末から実施しております。
私が止めない限り、魅力的なホームページが育たないと言う懸念からの出発でもあります‥‥。

その時。 私は今まで読んだこともない、未知の著書に遭遇しました。
森透匡著 「元刑事が教えるウソと心理の 見抜き方」 (明日香出版刊 1500円+税)

51-4t-hXFgL__SX339_BO1,204,203,200_.jpg

元刑事の森 透匡 (もり・ゆきまさ) が書いた著ということで、私は半分以上は小バカ
にして読み始めました‥‥。 しかし途中から、私は完全にこの著書の虜に変身していた。
というのは、著者も書いていることだが、日本の警察では 特別に 「ウソの見抜き方」
を、教えてはいない。 しからばどうして、刑事に必要不可欠の 「ウソを見抜く力」
という独自のスキルが体得出来るのか?
「ウソの見抜き方は、他人に教えられるものではない。 それぞれが、それぞれの現場
経験を通じて学ぶもの」 と考えられており、体系的に教えることが出来ないスキルと
考えられてきました。
そう言えば、この 「ウソを見抜く力」 は、何も警察官だけが必要とするスキルではない。
経営者がもっとも必要とされるスキルではなかろうか?
ところが、私の場合は誰に教わったのか? いや、教わった記憶は全然ない。
体験的に、自分が正しいと思うことを実行し、その基準に「合わない人との交際を、
意識的に避けてきた」 だけに過ぎない。

この著書は、当初は刑事関係者の必読品になることを望んでいたらしい。 ところが、
途中から中小経営者の 「民間ビジネスの世界で、必読品になった」 ようだ。
刑事ドラマで 中心になっているのは、「取調べ」「事情聴取」「尾行・張込み」
「聞込み」「犯人逮捕」「家宅捜査」 など‥‥。 その中で一番重要な仕事は、
「取調べ」 や 「事情聴取」 という 「人から、情報を引出す作業」だと著者は言う。
関係者が、心の底から本音を話してくれる確立は たったの「60%程度」。 とくに目撃
者などの参考人の場合には、「忙しいから早く終わりたい」 とか 「何度も呼びだされ
るのは、面倒だ」 と考えて、ウソはつかないまでも、十分な説明をせずにその場に合った
適当なことを言う例が、圧倒的に多いとのこと。
つまり刑事には、これ等の関係者が 「真実を述べているかどうか を判断する能力‥‥
ウソを見抜く力」 がどうしても必要不可欠に。

ウソと言うのは、失うモノが大きければ大きいほど強固になり、結果として大変見抜き
にくくなる。 その代表が県会議員や市会議員などの政治家であり、経営者。
政治家は、立候補するに当たり大変な借金をして議員になり、報酬一千万円以上にあり
つける場合もある。 それが辞任してタダの人になったら、家族をはじめ誰も注目して
くれない。
経営者も同様で、談合や偽計競売妨害などは会社のためにやったというケースがほとんどで、
悪いことをしたという意識が皆無。 それが 指名停止処分を受けたとなると、下手をすると
倒産ということになりかねない。
著者は、「男性と女性では、どちらがウソがうまいか」 と、よく質問されることがある。
個人的な印象では、圧倒的に女性がうまい。 男性は 取調べでは視線が合わないように
目をそらしている場合が多いが、女性は刑事の顔を見ながら 「自分のウソがどれだけ
見抜かれているかを確認している人が多い」 という。
この報道が、刑事よりも中小の経営者に愛読されるようになったのは、相手のウソが
見抜けたら正しい情報を得ることが可能になる。
その結果、経営者として最善策にたどり着くことが可能になる。
だから、この本が読まれている。

この本が素晴らしいのは、人間の心理を読む場合は、「目の前にいる人」 だけでは
なく、「目の前にいない犯人の心理も、合わせて読む必要がある」 ことを強調して
いること。 
つまり、「自分が犯人だったら、どうするだろうか?」 を、現場で推察する。
著者は知能犯担当の刑事だった。 ある市役所の幹部が、入札情報を流して100万円の
賄賂を貰った。 そして 押収された領収書から、若い女性への高価な貴金属購入に
充てられていることが判明した。 そうした経緯も細かく書かれている。
さらに、イギリスのデズモンドモリスの言葉として、「人間の動作で、一番信用出来る
のは①自律神経号 ②下足の向き ③上半身の姿勢 ④意味の分らない手振り ⑤意味
の分る手振り ⑥顔の表情 ⑦言語を揚げで、言語ほど信用できないモノはない‥‥と
具体例を挙げてこと細かに説明してくれている。
これは、刑事が現場で使う人間心理の見抜き方の根幹をなすもの。
この解説書が本著ですから、私が途中から虜になった理由が分って貰えると思う。
ともかく参考になるから、一読をお勧めしたい。
posted by uno2016 at 20:23| Comment(0) | 書評(その他) | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。