2016年05月30日

2年前に、こんな素晴らしい著書が出版されていたのですね!?


上阪 徹著「成城石井は安くないのになぜ選ばれるのか?」(あさ出版 1400円+税)

成城石井本.JPG

2年前に、この本が出版されていたことを知っている人は、何人いますか? 
「成城石井」 というスーパーの存在、そのものを知らない人が多いのではなかろうか。 実は、私もこの本を読むまでは、まったく知らなかった。
なにしろ、駅ナカの小型店舗や郊外の大型店舗を含めて、全国で 130店舗程度を展開しているらしいのだが、同社のネット上で表示されている店舗数は117店舗しかない。
しかも73%に当る 85店舗が世田谷・成城を中心とする東京と横浜に集中。 埼玉6、千葉4で、茨城・栃木・山梨が各1店舗。 大阪・兵庫・京都・奈良で 16店舗。 愛知・静岡・岐阜でも13店舗しかない。 それ以外はネット上では北海道、東北、北陸、中国、四国、九州を含めて店舗数が0の県ばかり。
東京に長く住んでいる私ですら、スーパー・成城石井は 知らなかったのだから、店舗のない地方の方が知らなくて当然。 それでなくてく、スーパーなどはどこにでもあり、不便を感じていない人が多いと思う。
だが、この著書を読んで、同店で買物をしたいと思い、どこに店舗があるかを調べた。 そしたら小平市には店舗がないことが判明。 一番近いのは、JR小金井駅南口2分と書いてあった。 前原坂上までの間に位置するセレオ・ビルの1階らしい。 電話して道路の右か左かを聞いた。「右だ」 というので、簡単に見つかると思って出掛けたが、それらしいスーパーは見当らない。
そこで、自転車に乗ろうとしているおばさんに、「この近くにスーパー・成城石井があると聞いてきたのですが‥‥」 と訊ねてみた。
「それだったら、駅前。 あのビルの1階!」 と言うではないか。
JR小金井駅の南口が再開発されて、セブンイレブンをはじめ 多くの店がオープンしたことは知っている。 私もいくつかのビルへ入っている。 南口駅前ビルにも、食事をするために 何度か入っていた。 エスカレーターで2階へ直行していたので、1階が成城石井の店だとは気付いていなかった。 買物をした帰りに良く見たら、外側から 「スーパー・成城石井」 の看板が、かろうじて見ることが出来た。

成城石井店.JPG

そんな次第で、一昨日と昨日の2日間、初めて同店で買物をして、品揃えなどを確かめてきたという次第。 買ったのは2日間で5000円余で、この程度では同店の魅力を語る資格はない。
著者の妻やその友達の話を要約すると、次のようになる。
「成城石井でお肉を買っていると、もう他所のお店の肉は買えない。 そもそも子どもたちが成城石井のお肉以外は食べてくれない」
「ちょっと変わったものがたべたいな! おいしい調味料や食材が欲しいな! と思ったら必ず成城石井へ行く。 そうすれば、間違いなく何か面白いものが手に入る」
「総菜のレベルが他のスーパーとまるで違う。 置いてあるものも違うし、味もびっくりするくらい本格的」
「ともかくレジが早い。 ほとんど並ばなくてすむ。 店の人が袋へいれてくれるのが叮嚀で、ものすごく上手」
「サービスのレベルが違う。 感じか良いし、何でも聞けばすぐに教えてくれる。 従業員が丁寧だし、商品に詳しい。 主人のワインは、この店でしか買えない」
ともかく、並のファンでなく、熱狂的なファンを無数に持っているらしい。

私か師と仰いだのは、日本人では下村治氏と渥美俊一氏。
下村治氏 (1910~1989年) は、ご存知の通り1960年に池田勇人首相が発表した 「所得倍増計画」 を、影で演出した経済人。 氏は 「現在の日本の企業や資本家はそんなに金を持っていない。 しかし優秀な人材は腐るほどいるのだから、環境を活かして、イノベーションさえ正しく行えば 10年間で国民所得を26兆円に倍増出来る」 と考え 「所得倍増計画」 を推進。

一方、渥美俊一氏 (1926~2010年) は、新聞記者時代にアメリカの流通業界に勃興した新潮流を勉強して、日本にチェーン・ストアと言う、5年刊で 売上100倍目標の新しい産業を起こして大手の有力企業のほとんどと小売業やフード・サービス業者を育て上げた。
私は渥美俊一氏の言う 新しいプロの商品開発の達人・マーチャンダイザーや、計数に明るいコントローラー、若手教育担当のエデュケーター、スーパーバイザーというプロを育て、5年間で住宅を含めた小売価格を半分にしなければならないという理論には深い感銘を受けた。 そして、渥美氏から、「貴方がたがモタモタしていると、私の仲間のチェーン・ストア仲間が 地域の住宅市場を奪いますよ」 との挑戦状を受けていた。
しかし私は、アメリカの地場の生産性の高いビルダー業界の実態を把握していた。 アメリカの地場ビルダーは 造船業界に学んで、早くからIE (インダーストリアル・エンジニアリング) 理論を 完全にマスターしていた。 また、共有地を30%以上と大きくとる 「オープンスペース・コミュニティ造り」 の達人でもあった。
したがって、彼らはアメリカ生まれのグローバルなハゲタカ資本主義は、基本的に 怖いとは感じていなかった。 これに倣って私が指導していたのは、地域密着型の地場ビルダー資本主義。
地域のコミユニテイを尊重して、大規模な投資よりも地域の交流を大切にする企業。 人を使い捨てにするのではなく、利益を従業員や地域住民に幅広く還元する。 そして、私益より公益を優先させ、儲からなくても 撤退しない地場ビルダーの育成で、渥美氏には絶対に負けないという自負を持っていた。
しかし地場ビルダーの育成という仕事は、私の指導力不足ということもあって思うように進まなかったのは事実。

そしてこの著書で、渥美氏よりも 「消費者主導主義者」 で、アメリカの理論を上回る 消費者の支持によって店を大繁栄させていた成城石井の存在を知り、大衝撃を受けた。
同社は1927年、成城駅前の果物店として発足。 1976年から成城石井として高級食品のスーパーとしてチェーン展開。 しかし、2004年焼肉・牛角やampmでお馴染みのレックス・ホールデングの傘下に入ってしまった。 それまでは15年かかって店舗を何とか30店にまで拡げてきたが、いきなり 「3年間で100店舗にまで拡大するように」 と、レックス社から命令された。
今までは顧客のことを考えて、真剣に商品開発に取組んできたのに、新会社では 商品開発のことはそっちのけで、話はもっぱら新店舗のことばかり。 このため、あっという間にお客が離れて、業績は急激に下降。 そして成城石井の本社も、レックス本社の高級ビルの近くへ移転。 困ったのは高い家賃だけではない。 何よりも店舗が近くにないため、現場が把握出来ない。

こうした最悪条件を改善するため、新社長として2007年に派遣されたのがイトーヨーカ堂で構造改革を成功に導いた大久保氏。 氏は、「こんな良い商品があるのに、どうしてもっと売込まないのか。 POPを替えて試食販売を やって見よう」 と励ましてくれ、現在社員が必ず身につけている 「成城石井BASIC」 という24頁の小冊子を作るとともに、営業本部長に商品開発の課長だった原氏を抜擢し、それと同時に本社を横浜へ再移転して社長室なくしてくれた。
この大久保氏は 3年間で飛躍のきっかけをつくり、後任の社長に原氏を推挙した。 そして 2011年にレックス社が降りて、現在の最大の株主はローソンになっている。
2015年10月時点で、同社の社員は4255人で、資本金は52.5億円。 店舗数は2015年5月の時点で125店舗。 2014年12月の時点の年商は630億円とか。 これは同社の正式な発表ではなく、ネット上での推定数字。

ともかく、2004~2011年までの7年間におよぶレックス社による買収劇の衝撃は、同社に関係するすべての人にとって相当な衝撃だった。 そして、この衝撃があったからこそ、成城石井の価値とは何か、を改めて見直す好機になった。
レックス社が持ち込んだ覆面調査も、大久保氏の 「成城石井BASIC」 もきちんと残っている。
「これこそ、成城石井の最大の特徴。 仕入れでも、仕組みでも、何か良いものがあるとどんどん吸収して、自分達で変化させて自分達の形にしてしまう。 これは、昔から成城石井が得意としてきたことです」 とは、原社長の弁。

この本を読んで、成城石井は 「食」 にこだわった店だということが、良く分かった。
「おいしいものを仕入れて、手ごろな価格で提供する」 のが信条。
そのために、店舗が1つしかない時から 自社のバイヤーが世界を飛び回って商品探しをやっている。 現在は 「東京ヨーロッパ貿易」 という専属の子会社を持っていて、独自の仕入れを行っている。 したがって、成城石井にしかない、クォリティの高い商品が多くある。
その代表はワイン。 どの商社もスーパーも、ワインは船便で輸入している。 このため 赤道直下を通る時に、すべてのワインの味が変質する。 たしかに、ヨーロッパで飲むフランスワインにしても、イタリアワイン、オーストリアワイン、ドイツワインにしても日本国内で飲むよりも はるかにうまい。 これは、赤道直下で蒸れないため。
成城石井では、リーファー・コンテナとい低温で直輸入している。 したがってうまい。
同じようにチーズや生ハム、バターなども輸入される。 このため、輸入商材は 3割にもおよんでいるという。
もう1つ、他のスーパーと大きく異なる点は、各スーパーはバックヤードで加工している。主に揚げ物を中心に加工して店先に並べられるが、成城石井の場合は6店舗の時から、バックヤードではなく、セントラル・キッチンを持っている。
そのセントラル・キッチンを支配しているのは、一流の料理店のシェフをスカウトして 味などを一任している。 これだと、惣菜などは不味いわけがない。「どんなにリキんでも、成城石井の惣菜には勝てない」 と言われる秘密はここにある。

さて、私はヨーロッパの料理は、それほど素晴らしいとか、おいしいと唸ったことはない。
ワインよりも焼酎派であるし、胃や口よりも腸を重視する人間。
したがって、肉や牛乳、バターなど腸に悪い食物よりも、納豆、ヨーグルト、バナナ、海草類や漬物などが好物。 また、ガンに良いと言われているニンニクなどの野菜類が大好き。
このため、初日は納豆巻きと味のついていないヨーグルトと黒焼酎と塩のかかっていないカッシュナッツとくるみを買った。 正直言って、それぞれに大変においしかった。
このため、翌日はチーズケーキと、豚肉の切り落とし、納豆などを買った。 納豆は粒が大きく、量も少なくて感心しなかったが、チーズケーキには さすがにプロだと唸らせるだけのおいしさがあった。
しかし、これからも通い続けるかと聞かれると、返答に困る。
時には寄り道をするのも良いだろうが、私の理想とする店だとは必ずしも言えないからだ‥‥。


posted by uno2016 at 09:34
"2年前に、こんな素晴らしい著書が出版されていたのですね!?"へのコメント
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