2016年09月05日

「マグネチュード」より「震度」がポイントになる消費者と地場ビルダー (中)



前回、1995年の阪神・淡路大震災の現場では、細い10.5センチ以内の通し柱が折れ、軒並み在来木軸工法が潰れてしまっていた、と書いた。
その通し柱が折れて倒れた現場を見て、私は 「在来木軸の時代は終わった」 と感じた。
たしかに、ツーバイフォー住宅は1棟だけだが、隣りの家に寄りかかるように 倒壊していた。 しかし、これは明らかに設計ミスで、2間の狭い奥行空間に耐力壁が全然なかった。 したがってこれは、「潰れるべくして潰れたまで」。
神戸では、他のツーバイフォー住宅には、被害らしい被害は見られなかった。

それから9年後に、震度7を記録した川口町を中心に中越地震が発生した。
私は、都合4回も新潟を訪ねて地震の被害の実態調査を行った。
そこで見たものは、神戸以上の地震の怖さだった。
というのは、「大阪には、大きな地震はこない」 という新興宗教的な考えが流布していて、よくて10.5センチ角の通し柱が採用されていたほどで、半分近くは9.0センチ角の通し柱。
仲間の建材屋さんが、「運送途中で折れる通し柱あるほどだ‥‥」 と嘆いていた意味が、よく分かった。 正に嘆きたくなる現場だらけ‥‥。 何しろ、鉄筋の入っていない基礎が半分近くも占めている現場を見せられた時には、声も出なかった。

これに対して、多雪地の中越では 「さすが‥‥」 と、うなづかせるものを持っていた。 通し柱は細くて4寸角 (12センチ) で、中には5寸角 (15センチ) も散見された。
柱の太さもさることながら、私が驚いたのは1階を構成しているRC造の丈夫さ。 どの家も 多雪地のためにダブル配筋の高床方式を採用している。 すべての家は 高床になっていて、冬季は2階から出入する。
このため、すべての住宅はダブル配筋の高床で、1階は倉庫と自家用車の置場として活用。
その1階が、震度5~6地域だけではなく、震度7という烈震地でも1つも破壊していなかった。 もっとも、1階の天井までダブル配筋のRC造だったので、耐震性が強かったということはある。
だが、2~3階の木造は破壊しているのに、1階は軒並み原型をとどめていた。 これには、私の方がびっくりさせられた。 多雪地の1階はそれほど丈夫だった。

そして、多雪地の川口町では、ツーバイフォー工法を1棟も見かけなかった。
あったのは、木軸で、壁と床、天井に構造用合板を使ったツーバイフォーと在来木軸との 「相の子」 のスーパーウォール。
このスーパーウォールは 倒壊ゼロ。 しかし、壁や開口部周辺では被害を発生させていた。
川口町に入る前、私は魚沼市に本社があるトピアホームを訪れ、震度6地域でのスーパーウォールの被害状況をつぶさに調査するチャンスに恵まれた。
たしかに、震度6の地域ではスーパーウォールは強く、1戸も倒壊していなかった。
しかし、細かく見ると被害はゼロではなかった。 とくに目立ったのは、内部の細い石膏ボードの剥がれと、開口部周辺に入った亀裂。
これは スーパーウォールが、ツーバイフォー工法と在来木軸工法の 「相の子」 であるところからくる、当然の帰結であった。

まず、3尺間隔に4寸とか10.5センチの柱を入れる。
ということは、すべての構造用合板、石膏ボードが、3尺間隔の柱に取付られている。 間柱へのクギ打ちは、どこまでもおまけ。
そして、3尺間隔以外のところに生じた空隙には、細い合板や石膏ボードで埋められる。
とくに、目に付いたのは出隅のコーナー部分。 ここには45~50ミリの合板や石膏ボードの端材が使われている。 まず、震度5~6の揺れがくると、この端材を止めているクギが抜けて、すべてのコーナー部分の端材が墜落してしまう。
したがって、トピアホームでは、倒壊はゼロではあったが、こうしたコーナー部分の 手直し費用はバカにならないものになっていた。
次に大問題になったのは、開口部周りの亀裂。 何回も書くが、これはどこまでも亀裂であって、構造体が破壊するほどの問題は生じてはいない。
だが、開口部周りに亀裂がある住宅に住んでいる人は、気分がすぐれない。
この亀裂は、何から生じるかと言うと、3尺間隔に構造用合板とか 石膏ボードが止められているところから‥‥。 構造用合板の継ぎ目が サッシのコーナーに来ているのだから、どうしても亀裂を避けることは出来ない。 消費者に泣いてもらうしかない。

そこで、欧米ではどう対処しているかと、アメリカの建築現場を見ることにした。     
まず欧米では、3尺という細い構造用合板や石膏ボードは使っていない。
すべて最低でも4×8尺の長尺モノであり、しかもすべてが横張り。
日本へ、欧米の建築技術を導入する時に、必ず問題になるのが日本式の3×6尺方式でゆくか、欧米並みの4×8尺方式でゆくか、の選択。
当然、ツーバイフォーをオープンな形で日本へ導入する時に、この大問題が問われた。
当然のことながら、当初の私は4×8尺派だった。

しかし、アメリカの建築現場を見ているうちに、考えが変わった。
それは、アメリカには4×8尺モノでも苦にしない力を持った職人軍団が揃っている。
とくに天井に使う石膏ボードは、なんと4×14尺もある。
北米には背が高くて、ヘルメットを被っただけで、頭で4×14尺の石膏ボードを抑え、簡単にクギ打ちしてゆく。 背の大きな2人組は、掃いて捨てるほどいる。
ところが日本の職人さんは‥‥と考えると、こんなに背の高い職人を捜すことは不可能。 ということは、脚立の上に乗っかっての仕事ということになる。
これだと、4×14尺という長尺もので、2人組でなくても間に会う。 3×6尺モノを振り回す1人組で十分だということになる。
また、アメリカには4×8尺という重い石膏ボードを1人で振り回して施工している太った技術者は腐るほどいる。 そして、コーナー部分に構造用合板や 石膏ボードがこないように、8尺モノを自在に切り分けて使っている。

そこで、私が行った日本流の提案とは、端材が出ないように出隅から455ミリ以上離れたスタッドから構造用合板や石膏ボードを張出すというもの。
これを実行すると、たしかに 400ミリ近い構造用合板や石膏ボードの端材は出る。 しかし、懸念されていた出隅やサッシのコーナー部分の亀裂は 皆無になっただけではなく、構造体全体の強度を増すことになった。
ただし、一つ大きな問題が残った。
この方式は、どこまでもツーバイフォーのスタッド材で、完全乾燥材で幅が38ミリあるスタッドだから可能になるということ。
日本の在来の間柱の幅はせいぜい28ミリ程度。
クギは 3尺間隔に入れる柱にとめ、間柱のクギ打ちは、申し訳程度にしか考えていない。
この考えを大前提にしている以上は、サッシ周りからの亀裂防止は不可能と考えるべき。
こうした大問題を残したまま、日経ホームビルダーは第6章とか、第7章の提案を行っている。
どう考えても、耐震性の高い木軸工法にはならないから説得力に欠ける。

それと、もう1つ忘れてはならない基本的な考えがある。
それは、スーパーウォールが強度を持っていたのは、外壁だけではなく、床材や野地材に 構造用合板を使用していたこと。
この点については、次回にゆっくりと考えることにしたい。


posted by uno2016 at 08:52
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